王子様とブーランジェール
単車のケツから軽やかに降りて、ヘルメットを外している。
フワッと金髪のロン毛か登場し、靡いていた。
そして、こっちに近付いてくる。
上はプルオーバーのパーカーを着ているが、よく見ると下はグレーのスラックスで、制服と思われるものだ。
ひ、ひょっとして、こいつらは…!
奴らの正体に推測を重ねていると、その金髪ロン毛がこっちに近付きながら話し掛けてくる。
「すげー爽やかイケメン!…ひょっとして、君、ミスター竜堂?」
俺のことを、知っている?!
…とうとう、やはり。
現れたな?
約束の時間よりもかなり早いが、不良どもが時間を守らないことなど、想定内だ。
うちの男子生徒を襲撃して、俺を挑発し。
俺をつけ狙った輩どもが。
…この、クソ不良どもが!
ここで会ったが百年目。
完膚無きまでに、返り討ちにしてやる!
「ミスター竜堂!俺達さー」
「…ブッ殺してやる!!」
「え?…えぇっ!」
敵だと判断すると、そこからは早い。
金髪ロン毛に向かって助走をつけて、左膝を振り上げて飛び掛かる。
ヤツの驚愕の表情に、ドカッ!と左膝が良い音をたてて炸裂した。
「ま、マジか…」
地に着地した俺の横に、そう呟きながらバターン!と倒れ込んでいた。
「…うぉーっ!厚雅、何だそれは!」
金髪ロン毛をケツに乗せて来た野郎は、ヘルメットを外したのち、仲間の予想外の展開にビックリして叫んでいる。
そして、俺の方をも指差して叫んでいた。
「っつーか、そっちも目が合うなり飛び掛かるなんざ、昔の苫小牧のヤンキーか!爽やかスポーツマン風イケメンのくせに!」
「…相手殺すのに、イケメン関係あるかよ!人を指差すな!」
「殺す?…おまえは狂犬か!…嘘っ!」
四の五のほざいている暇はない。
敵は瞬殺させる。
今度はそのガタガタほざく赤髪のチャラヘアー男をロックオンして拳を振り上げて飛び掛かる。
俺の臨戦態勢に気付いたのか、ギョッとした表情をしながらも、ヘルメットを投げ捨てて構えていた。
…いい度胸してるじゃねえか!
しかし、俺達二人の間に影が入り込んでくる。
「き、謹次!」
同時に振りかざしていた拳が、押されて外に弾き返された。
…このっ!
その反動でバランスを崩しかけたところ、真上にはすでに鉄パイプが振りかざされている。
地面に降り落ちきる前に、体を捻って転がって回避した。
早っ…危なっ!