王子様とブーランジェール
潤さんは、呟くかのような小声で話す。
「夏輝…いくら桃李に見られたくないからって、今のはないよ…?」
叫んだ後にそう思いましたよ。ええ。
ちょっとムキになりすぎた…。
ボケェーっ!!は、ないよな…。
すると、すかさず狭山が攻撃をしてきた。
「あぁ?竜堂!おまえ、おんぶプレイのくせに、何を偉そうに女子に命令してんだバカめ!おまえは殿様かってんだ!このおんぶ殿様!」
「やだー。ホントー。竜堂くん、殿様みたいー」
「おんぶ殿様ー!」
「ホント、偉そうなのサイテー!女に命令すんのサイテー!」
「女子をリスペクトしてない証拠だよね」
「チキン殿様、いいかもな」
一気に非難集中!
狭山の一言はともかく、まゆマネの一言はグサリときた。
殿様って…。
偉そうにしてるだけで殿様なら、おまえは何だ?
将軍?大佐?
それに、理人、さりげなく乗るな。
いつまでチキン引っ張んの?
後でマジで覚えてろ。
「ナツキくん。昭和の男は今時流行らないですよ。今度は殿様プレイですか」
菜月、バッサリ言ってくれるな。
なぜ命令口調なだけで、昭和の男?
殿様プレイって…。
「ソープランド大阪城には殿様コースってのがあるんだって!竜堂、まさかそこの出身の殿様?」
美梨也…それは非常に危ないネタだぞ。
ちょっと怒鳴っただけで、何この非難っぷり!
おんぶにくわえて、殿様?
女子…いや、この連中、恐ろしいな!
「…ちょっと、ライオン丸も言ってやれ!このおんぶ殿様に!偉そうに殿様すんなって!」
奈緒美が再び、桃李を呼びつける。
「ライオン丸、おいで。暴言吐かれて可哀想に」
え。え?何でそうなるワケ?
暴言なんて…言ったか。
「え…あ、あの…」
「言いたいこと言ったれライオン丸!どうせこいつ、いつも偉そうにしてんだろ!?モテモテのイケメンだからって調子に乗ってんだよ!」
「『星天高校の新しい王子様』じゃなくて、『新しい殿様』になれば?殿様コース!」
美梨也、だからそのネタはヤバいぞ。
何かに着火したかのように、俺に非難が。
ボケェーっ!!が、そんなにマズかった?
俺…いつも、桃李に対して態度ヤバいのか。
桃李の方を見る。
何だか、キョロキョロしていて挙動不審だ。
って、この展開。
俺、桃李に何か言われるワケ?
マジ?
『夏輝、殿様みたいでサイテー!おんぶもサイテー!』
もし、桃李にこんなこと言われたら…きっと、床拭きの件以上に立ち直れないな…。
あぁ…。
「あ、あの…」
桃李が言いづらそうにしている。
な、何だ。
おんぶ殿様はサイテーとか言うのか…?
ちょっと、覚悟しないと。