王子様とブーランジェール
奴らの一人がそう発した瞬間。
群衆の向こうで、バン!バン!と連続して発砲する音が響く。
同時に「うわっ!」「な、何だ!」と、男の驚愕の声、悲鳴が向こうから徐々に聞こえ始めていた。
始まったぞ…第二撃が。
定置網とイバりん坊将軍に気を取られている奴らの背後から忍び寄る。
…投網バズーカを持った女子たちが。
そして、予告もなく不良どもの背後目掛けて撃ちまくる。
発射された投網の塊は、風圧でバッと放射状に広がり、遠慮なく奴らを襲う。
「…網?!絡まって…!」
「じゃ、邪魔くせぇっ!」
網が絡まり、自由を奪われ網の中で藻掻く連中。
動けないその隙に、女子たちは一気に集まり、手にしていた武器…一斗缶やら物干し竿やら、なぜか跳び箱のパーツやらで、網越しに不良たちを容赦なくガンガンと袋叩きにする。
その模様があちこちと、次々に繰り広げられていた。
「…あははは!…背後に忍び寄る影に気付かないとは、やはりおまえらは三流愚連隊だ!バカめ!」
更に更に笑う狭山。
…第二撃とは、投網バズーカによる背後からの不意討ち攻撃。
複数で班一つを構成し、先日の藤ノ宮と尾ノ上さんたちのように、連携を取って手際良く、確実に一人ずつやっつける。
あまりにも連携が取れていて効率が良いので、どこかで教育を受けてきたんじゃないかと、本気で思ってしまう。
その光景を見た、率直な感想。
女子って、恐い。
「…おまえらナメやがってぇぇっ!この女あぁぁっ!」
「上等じゃねえかコラァ!」
劣勢に立たされたことを理解したのか、クソ不良どもは、挙動不審気味に辺りを見回したのち、すぐそこにいた狭山の方へと足を向ける。
ある程度近付くと、あっという間に狭山に飛び掛かろうとする。
あっ…!
「クックッ…このバカめえぇっ!!」
そう叫びながら、狭山は金属バットのグリップを両手で握り、右膝を上げておもいっきりスイングする。
ブンッ!と空を切る音がして、あっという間に相手の顎にドゴッ!とブチ当たる。
相手は声を発することなく、地に倒れた。
えっ…フルスイングで、躊躇いなく!!
「クックッ…女に手を挙げるとは、言語道断!…と、言いたいところだがなぁ?私達には本気でかかってきても、構わんぞ?」