王子様とブーランジェール
これはもう、不良大戦争だ。
女子対男子、っていうのが違和感たっぷりだけれど。
だがしかし、とうとうこれで、奴らを皆殺しに出来る。
俺を逆恨みして、何の関係もない男子生徒を傷つけた、くだらない茶番劇を繰り広げた奴らを…とうとうぶっ飛ばすことが出来るのだ。
だったら、遠慮なくやらせてもらう!
だが、しかし。
「…おまえ、邪魔!…邪魔だっつーの!」
松嶋が、さっきから傍を離れてくれない。
俺を見つけては襲いかかってくる連中を、得意の鉄パイプで、俺より先にことごとく倒してしまう。
戦争の渦へと身を投じようとすると。
「…待った!」と、松嶋が目の前に現れる。
思わず動きを止めてしまう。
すると、緑ブレザーのクソ不良連中があっという間に俺達を囲んでいた。
「…ミスターコラァ!姫と仲間はどこだあぁっ!」
「総長の愛する姫を…何してくれてんだあぁぁっ!」
来た。来たな。
瞬時にイラっとする。
「…あぁ?…おまえらこそ何してくれてんだあぁぁっ!こざかしい真似しやがってえぇっ!」
そう怒りをぶつけ返していたが、またしてもその隙に松嶋が間に入り、華麗に鉄パイプを振り回しては、一撃必殺で急所を突き、やっつけてしまった。
…あぁっ!また!
「松嶋おまえぇぇっ!邪魔するな!」
先ほどから、こざかしい!
イラっときてしまい、怒鳴り散らす。
すると「やだなー。慎吾って呼んでー。うふっ」とフザけている。
フザけている!!
呼び方気にするとは、おまえは女子か!
「あんたねぇー。俺達の軍の大将だってわかってんの?大将やられたら俺達敗北なんだよ?大将自ら戦線乗り込んでどうすんの」
だから、俺から離れないというのか。
護衛か!
「俺にもやらせろ!あいつらには頭にきてんだよこっちは!」
「だからってねー。ちなみに『全員皆殺し』のセリフに違和感ないかい?全員=皆でしょ?あんた本当に成績学年トップかい?それとも天然かい?」
「天然…うるせえぇっ!」
「とりあえず。マシュー総長と幹部はあんたがやっつけるんでしょ?だったら、俺に護られながらその顔を探しなさい…っと!」
ちっ。納得できない。
護られるなんて、性に合わない。
松嶋が連中を相手しているその隙に、後ろにたまたまいた不良に蹴りをドカッと入れる。
見事に腹に決まり、不良は腹を抱えて踞った。
「…あ、ちょっと!何やってんの大将!」
ちっ。大将大将…寿司屋じゃねえわボケ!