王子様とブーランジェール
やれやれ。
出てくるなり矛先は俺で、ひどく罵声の嵐だ。
っつーか、先にケンカ売ってきたのは、そっちだろうが。
関係ない奴ら巻き込んで、こっちも相当頭きてんだよ。
くだらねえ。
思わず鼻で笑ってしまう。
しかし、それが一層の怒りを煽ったのか「あぁっ!?」「調子に乗ってんじゃねえぞコラァ!」と怒号罵声が激しくなった。
だが、俺の姿を目にして、一番怒りを顕にしているのは、もちろん。
金髪ポニーテールのマシュー総長だった。
こっちをぎっちりと睨み付け、今にも血管がビキビキと浮き出てきそうなぐらい、表情がもう怒り一色だ。
「竜堂おぉぉっ!…瞳は、瞳をどこへやったあぁっ!よくも人の女に手を出してくれたなぁ?!」
随分と必死だな。女一人に。
しかし、言いたいことは言わせてもらう。
「…はぁ?手を出す?…何のことだか知らねえし。どこのどいつの話してんだおまえ」
「何だとてめえ!」
幹部の手を振り払ってこっちにずかずかと歩いてくる。
おっ。やんのか?
上等だコラ。
…だが、その前には松嶋が立ちはだかる。
狭山同様、鉄パイプを突き付けた。
「俺達の大将には近付けさせんよ?」
「…は?!おまえ…紋中の松嶋か?!」
「あれー?ケンカしたことあったっけ?…俺は覚えてないけど」
「くっ…!」
松嶋に出てこられて、マシュー総長は一旦下がってしまった。
ちっ。余計なガードするな。
殺る気十分なんだから、もういいだろう。
だが、仲間のもとへ引き下がる総長に狭山は言い放った。
「…おまえの探してる仲間とやらも、姫とやらも、ここにはおらん」
そのセリフを聞いて、マシュー総長は目を見開いた。驚愕の表情といったところだ。
お仲間も「あぁ?!」「何だと?!」と一緒に反応したのを見て、クックッ…と笑う狭山。
「…バカめ!…このお真面目進学校に監禁しておいたら、真っ先にハゲ糸田にバレて、瞬殺で退学だ!そんな初歩的ミスを我々がすると思うか!」
「じゃあ、どこへ!」
「お仲間の方は尋問した後に、シャトーブリアンと熟成ランプ肉を食わせて、先ほど、うちの社員が丁重に江別の高校までお送りしたわ!ジャスマックで風呂にも入れてやったんだぞ?有り難く思え!バカめ!」
熟成ランプ肉?それ、美味いの?