王子様とブーランジェール
率直な疑問だ。
藤ノ宮と理人は現場を見たから、知っているのだろうけど。
この二人は何だ?
ひょっとして、こいつらも?
「狭山さんには、私から話した」
そう言い切るのは、またしても藤ノ宮だった。
「竜堂に言えないんだったら、狭山さんには話そうって桃李を説得したの。狭山さんなら力になってくれるからって説得したら、渋々だけど了解してくれた」
狭山なら、って?
狭山、狭山って…随分と頼りにしてるな?藤ノ宮も桃李も。
何だよ…。
その狭山は、俺の横で腕組みをして偉そうに立っている。相変わらずだ。
「何でなのよ…」
ボソッと呟く、藤ノ宮の声が。
震えている。
「…何でなのよ!…何であんたのせいで、桃李がやられなきゃいけないのよ!」
声を荒げて、ずかずかとこっちにやってくる。
今にも喰ってかかられそうな勢いでやってきたが、傍にいた狭山がと間に入り、「まあまあ」と藤ノ宮をなだめるが。
それでも藤ノ宮は怒りが治まらないのか、俺に対しての攻撃は止めない。
「何であんたの幼なじみってだけで、桃李がイジメのターゲットになるのよ!…あんた、何やってたのよ!」
「律子、落ち着け」
「大勢に囲まれて暴力奮われるなんて、どんなに恐いことだか、わかってんの?!…何回もやられてると、心おかしくなっちゃうのよ?!…それを、あんた!」
「やめろ。律子」
「ミスターだか王子様だか知らないけど!あんた、弱い者の痛み、わかんないんじゃないの!いつも高慢に振る舞ってるもんね?!桃李のこと、見下してバカにして怒鳴ったりしてさ!」
…俺が?
桃李を…見下してる?
バカに…してる?
そんなこと…。
…してたのか?俺?
「みんなの前であんなに怒鳴られて、怒られて、桃李が傷付いていないとでも思ってんの?!それなのに、こんなカタチでも傷付けるだなんて、あんまりじゃない!」
俺が、桃李を傷付けている…?
「…律子、やめんか!このバカめ!」
最初は落ち着いて宥めていた狭山だが、藤ノ宮があまりにも止める様子がないので、声を張り上げていた。
「この!」と、藤ノ宮の額にデコピンをする。
「痛っ!」
「…あまりにも話が逸れているではないか!恨み辛みは個人的に言え!過去の自分と今の神田を重ねおって!バカめ!」
「…もぉっ!」
狭山に的確に怒られて、口を尖らせている。
ようやく黙った。