王子様とブーランジェール




「ごめんね?ナツキくん。律子、イジメられてた経験あるから、今回の神田の件についアツくなっちゃって」

「上山さん!余計なこと言わないで下さいよ!」

うふふと静かに笑う菜月に対して、藤ノ宮は「ふんっ!」と突っぱねている。

藤ノ宮がイジメ?

こんな気が強い女なのに…意外だな。

「クックッ…律子に危害を加えた連中は、我らが尊い神、先代ミスターが一捻りにこらしめたがなぁ?あぁ?」

狭山がクックッ…と、笑い続けている。思い出し笑いのようだ。

「クックッ…我らが神の武勇伝は今度ゆっくり聞かせてやろうぞ。クロワッサンでも食べながらなぁ?あぁ?」

まだ笑ってる。



「…と、いうワケでだ。球技大会の初日に律子が神田をつれて私のところへと来たのだ!」



笑い続けていた狭山、その笑いの勢いそのままこっちを振り返る。

話のフリが唐突だ。ちょっとびっくりした。




「菜月と一緒に事細かにこれまでの経緯、様子を聞かせてもらった。当たり前ながら、神田にはイジメられる心当たりが全く無い。…だかな?ちょっと違和感があってな?」

「…違和感?」

すると、狭山に代わって菜月がパソコンの文字打ちを続けながら話し出す。

「…神田の話と校内の監視カメラでリレー方式の捜査を行ったところ、危害を加えた女子生徒は2-10磯貝、2-6三崎、3-7佐藤亜香里、3-3三田の四名だと思われます。この四名の共通点は『ナツキくんに声をかけてプレゼントを渡したり告白して接触したことがある』ぐらいでしょうか」

「…俺に?」

誰、この人たち。

名前聞かされても、わからない。覚えてない。

顔…見たら何となくわかるんだろうな。

「…ですが、交遊関係をもっと深く調べていくと、わかっちゃったんですよね。これが」

「…何が?」

「その話は一旦置いといて。…確かに、変なんですよ。神田に対する言いがかりが。ナツキくんも違和感あったんじゃないんですか?」

「…何を?」

「たかが幼なじみというだけで、神田がなぜここまでやられるのか?」

それは、何となくだが思った。

他のヤツが聞いても違和感があるのか。

「…確かに、あなたと神田は幼なじみですから、そこそこに仲が良いですが、何も妬まれる程ラブラブだったり、噂が立っていたワケではありません。ナツキくんに関しては、違う噂の方が先行しておりますから、神田がターゲットになるとは、むしろ考えにくいものです」

「…違う噂?」


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