王子様とブーランジェール
「それに、彼女たちは『男を他にもたぶらかしている』『蜂谷と歩いているのを見た』と言っていました。…何も、蜂谷は女子に対してはオープンな性格ですからね?サッカー部のマネ達や、クラスの女子、知り合いの女子などいろんな女子と下校している姿はしょっちゅうですよ」
「…え?」
つまり、それは何だ?
どういう…。
「なのに、なぜ神田だけがクローズアップされてそこを責められるのかは疑問です。そこには意図を感じます」
「…つまりだ。どっかの誰かが、散々盛って盛った話を連中に吹き込んだんじゃないかと、私は思っておる。神田に怒りが向くように、煽ってなぁ?」
「恐らく、『ナツキくんが神田にストーカーのように付きまとわれて困っている』だとか、『神田はナツキくんの彼女気取りでいる』とか、あることないこと吹き込んでいたのではないかと思われます」
「何でそんな…!」
「恐らく、神田個人を気にくわないのでしょう。そして、ナツキくんと神田が幼なじみでそこそこに仲が良いことを知っているかと」
どっかの誰かが?
散々盛って、あることないこと吹き込んでいる?
…誰?誰が!
「女子四人の交遊関係を調べたら、ドンピシャで一人、その『どっかの誰か』であろう人物が浮かび上がってきました。恐らく、そいつが黒幕ではないかと」
「確認したら、神田とも面識のあるヤツだ。ヤツと何があったかも聞いたぞ?間違いない。ヤツが黒幕だ」
どっかの誰かが、わかった?
そいつが黒幕?
桃李を囲んで、危害を加えるよう仕向けたヤツ…?
「…どこのどいつだ」
頭を整理して、状況を理解出来てくると。
怒りがふつふつと沸いてきた。
直接原因は俺かもしれないが。
あえて、こうなるように仕向けて、桃李を傷付けた。
そんなヤツがいるとは…!
「…どこのどいつだそいつはぁっ!…殺す!殺してやる!」
ここぞとばかりに、爆発して叫んでしまう。
誰なんだそいつは!
俺の大切な桃李を傷付けようとする輩は…誰だ!
「殺すって…一番の原因はおまえだろ」
理人にボソッと呟かれるが、いやいや、それはそうだけど、それは置いといて。
とりあえず、その輩と連中を抹殺してしまわねば!
すると、狭山はまたしてもクックッ…と笑っていた。
「じゃあ…竜堂、我々に協力しろ?」
そう俺に告げる狭山の目は、悪意がこもった悪者の目になっていた。
「…この輩を叩き潰すことに、我々の利害が一致するからなぁ?」