王子様とブーランジェール




その姿を見ると、胸が裂かれるように痛い。

桃李が痛みを堪えて、じっと耐えているその姿は。

これが、俺のせいで起こったことなんだと思うと胸の痛みに加えて、腹立たしく感じる。

…自分自身に。




…なぜ、こんなことになったのか?

なぜ、俺が原因で桃李がこんなことになってる?

桃李が俺のストーカー?彼女気取り?

…もし、それが本当ならどんなに嬉しいことか。

だけど、残念。んなワケないだろ。

だから、俺の片想い期間、どんどん長くなっていく。





なぜ、なぜ?と、いっぱい疑問はあるが。

…あぁ、そんなのどうでもいい。

考えるだけ無駄だ。

今の俺、やらねばならないこと、あるだろ。




(桃李…)




…例え、俺が悪いのだとしても。

俺は、桃李を守る。助ける。




「…何やってんだコラァーっ!!」




そう大声を張り上げながら、勢いよくB教室のドアを開ける。

ドアはバン!と音をたてており、中にいた女子たちは動きを止めて、一斉にこっちを見た。

そして、こっちを見た途端、彼女たちは目を見開いたまま固まっている。

まさか、ネタの張本人が登場するとは…思わなかったか。



「り、竜堂くん…?」

「な、何でここに…?」



何が起こったか、わからないといったところか?

しかし、そんなフリーズしたままの女子たちなんて構わず、中にずかずかと足を踏み入れる。

「…どけっ!」

桃李に群がっていた女子たちを、しっしっと手で追い払う。

すると、後退りしながら桃李から離れていき、疑惑の表情でこっちを見ていた。



桃李はまだ、頭を抱えてしゃがんでおり、ぐっと目をつぶったままでいる。

俺の登場に気付いていないのか、気付いていても、恐怖のあまり体が動かないのか。

それほど、頭を埋めており…体がぶるぶると震えていた。




(ちっ…)



俺の…せいで。





「…桃李!」

俺が突入したのを皮切りに、菊地さんが後に続いて入ってくる。

桃李の下へと駆けつけていた。

「ま、ま、真奈ちゃん…」

「桃李、もう心配ないからね!狭山さん助けに来てくれたよ!よく頑張ったね!」

「う、うん…」

助けに入ったのは、狭山じゃない。

俺ですけど。



顔を上げた桃李の目には、涙が溜まっていてうるうるしていた。

それを見ると、ますます胸が痛い。



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