王子様とブーランジェール




「サッカー部の蜂谷センパイとも遊んでたんでしょ?!一緒に歩いてるの見たって人がいるんだよ!」

「地下鉄のクレープ屋の近くでキスしてたって!色々と手当たり次第じゃない!何なの?!」



…え?え?え?

蜂谷さんと、キス?!

な、何だと…!

思わぬところから、思わぬ情報が!



桃李の方をチラッと見る。

桃李も「…え?え?」と挙動不審になった後に、「ち、ちがう!ちがう!」と首をぶんぶんと横に振っている。

しかし、そこで菊地さんがムキになって代弁をしていた。



「そ、それは!桃李のほっぺに生クリームが付いたのを、蜂谷さんが変態のように舐めただけです!」




…変態!



い、いや。

そんなことがあっただなんて…聞いてないぞ!

なぜ、菊地さんが知っていて、俺が知らないんだ!

なぜ、俺に言わない?!




しかし、ムキになって反論すると、隙を突かれたかのように次々とカウンターが来る。




「何言ってんの?!そんな生クリームついた頬を舐めたとか、そこらの恋愛小説みたいなことあるワケないじゃん!」

「頬どころか口にだってしてんでしょ!信じられない!」

「ち、ち、ちが、ちが…ちがうー!」

「竜堂くんの前だから違うとか言って、嘘つくんじゃないよ!」




ここぞとばかりに一斉に攻めるか。

まったく女子の口の強さ、口撃といったらないな。

いや、俺も人のこと言えないか。



しかし、そんな状況を見守る冷静さの裏で、実は俺の中ではふつふつと怒りがこみ上げてきている。



生クリームついた頬を舐めた…?



それ、ほぼキスじゃね…?



(殺す…)



もう、直属のセンパイだとか、上司とか。

ないぞ…?

俺の大事な頬っぺた舐めたとか…許されないわ!腹立たしい!

後で殺してやる!

この蜂谷あぁぁっ!




二方向の怒りが混じって、イライラはMAXに近い。

だが、更なる展開はまだまだこれから。

その追い討ちは、とんでもない。




女子たちの一方的な攻撃が続く中で、その中の一人が、普通にとんでもない事を言ったのを。

俺は、聞き逃さなかった。



「美央と竜堂くんの仲もぶち壊して!あんたが間に入って別れさせたんでしょ!」

「最低だよね!美央さん、どんだけ泣いていたかわかる?!このストーカー!」



今…何て言った?!




< 655 / 948 >

この作品をシェア

pagetop