王子様とブーランジェール
「だって、竜堂くんはミスターだよー?みんなのものでしょ?だから私達もミスターを大事にして、フェアに行かないとね?」
「私達、平等でしょ?ね?」
「平等?何を仰ってるのですか?…神々しい存在ですが、夏輝様もあなた方と同じく普通の人間ですよ?」
「は?何言ってんの?ミスターは、この学校のアイドルだよ?」
「アイドルだもん!それなりの存在でなきゃー!」
…俺が、ミスターだから?
だから、抜け駆けするヤツはやっつけたってか?
平等?アイドル?…何なんだ、その理論。
だから、俺の近くにいた桃李がやられるのも無理はない、ってか?
すげえ、胸が痛てえ。
俺が、ミスターだから、俺の近くにいた桃李がやられるのは、当然…なのか?
だとしたら、この上なく腹立たしい。
自分自身の存在が。
俺は傷付いても全然構わないけど、桃李だけは傷付けたくない。守りたい。
…なのに、俺がいるから。
俺のせいで、桃李は傷付けられてしまった。
俺の、せいで…。
おもいっきり偏った思想に、目の前が、真っ暗になる。
はっきり言って、その思想は過激で危険だ。
どうかしてると思うよ。イカれてる。
そこに、恐怖を感じる。
…だが、恐らく。
こんなことを考えてるのは、こいつらだけじゃない。
こいつらは、本当に氷山の一角であって。
同じようなことを考えているヤツらは、他にいくつもいるんじゃねえのか?
そこにいる、小笠原や山田だって例外じゃない。
「…おまえら、正気か?」
女子たちと小笠原のやり取りを傍観していた狭山が、口を開く。
聞こえてきた声は、気持ち低く、トーンが落ちている。
またしても横やりを入れられたと感じたのか、女子の一人がカッとした口調で言い返す。
「…何よ狭山!文句でもあるワケ?!」
「そうよそうよ!あんただって先代ミスターを追いかけ回していたでしょ?!」
ハナから話を聞くつもりもなく、一気に臨戦態勢だ。
しかし、狭山はいつもの余裕不敵の笑みは浮かべておらず。
眉間におもいっきりシワをを寄せ、女子たちを本気で睨み付ける。
「おまえら…それが本音か?」
「だ、だったら何だっていうの!」
「だとしたら、こっちも出方を考えるぞ…」
(………)
…あぁ、うるせぇ。
いったい、何なんだ。
この、展開。
すげえ…気持ち悪い。