王子様とブーランジェール
「…だっせぇ。ダセえぞ。竜堂夏輝」
先日は金曜日だったので。
週も明けて、月曜日。
2時限目終了し、展開授業から教室に戻ると、腐れ縁の幼なじみが俺の前に現れる。
俺の席の前の席にドカッと座り込んだ。
そこは、尾ノ上さんの席ですけど。
「な、何だよ…」
あまり目を合わさずに、教科書を机にしまっていると、じーっと顔を覗き込んできた。
邪魔くさっ…。
「…だから!何だよ!」
顔を上げると、理人のシラけた視線が刺さった。
なぜそんなツラを向けてくる。
…だなんて、理由は何となくわかっている。
「週末、あれだけLINEしたのに、既読スルーすんな。話あるって言ってたのに。逃げんなダセぇ」
「………」
何も言えない。
理人からのLINE、散々無視した。
言われることはだいたいわかってる。
「女子たちが僕を争ってケンカしていたことがそんなに傷付きましたか?僕のためにみんなやめてー!みたいな?」
「………」
…そんなんじゃねえよ。勝手にやっていてくれよといった感じだ。
返答しないでいると、次々と質問責めしてくる。
「じゃあ、嵐さんが実は僕じゃなくて蜂谷さんが好きだったということに傷付いているとか。僕のことは遊びだったのですね?!みたいな?」
「……」
それも勝手にやっていてくれよといった感じだ。
くだらない茶番劇に巻き込みやがって…でも、その話は、週末、部活で蜂谷さんから謝罪を受けてしまい、話が出来ている。
「じゃあ、桃李に『もう俺に関わるな』ってどういうことだか」
一番、突っ込まれたくないことをズバリと聞かれ、ドキッとさせられる。
「…聞いたのか?」
「………」
今度は理人が無言になった。
肘をついて、シラけた視線を送られたままだ。
しかし、しばらくの間を置いた後、理人は口を開く。
「このチキン」
うっ…バッサリと言われてしまった。
動揺を隠そうと、素知らぬフリをしてみる。
だが視線は痛い。
いやでも、桃李からその話を聞いたってことなんだよな。
そうでないと、こんなにはっきり…。
「…何で、そうなんの?」
「何でって、何が」
「何で『関わるな』なんだよ。どうしてそんな展開になるんだよ。パンダフルにも行かないって、逆に夏輝が大丈夫かって」