王子様とブーランジェール
はっきり言い過ぎじゃないか?
優しいのか何なのかよくわからんので、さっきのセリフ取り消したい。
…でも、自分の悪いところをはっきり言ってくれる人の存在って、実は結構有難い存在なんだよな。
俺にも約一名、いる…。
『…で、高校で再会して、話しかけられたんだけどさ。俺…覚えてなかった。あんた誰?みたいな?』
そう言って、苦笑いしている。
覚えていない…それは、傷付くかもな。
『それ、ダメじゃないすか?』
『あー。だって、名字変わってんだもん。母さんに聞いてようやく思い出した感じ。6年だよ?6年』
そう言われると、無理もないような気もするけど。
6年の歳月は、短いようで長い。
…それからというもの。
蜂谷さんの高校生活には、ちらほらと嵐さんが絡んでくるようになったという。
蜂谷さんの新しく出来た友達と付き合ったり、同じサッカー部の先輩や、同学年のヤツと体の関係を持ったり、付き合ったり。
何となく、遠回しに視界に入ってくる…。
顔は合わせても、向こうから話しかけてくるワケでもない。
何。この遊び人。
幼なじみだけど。
そんな認識でしかなかったという。
そんな中、ちょうど一年前の話だった。
『蜂谷、ミスターがおまえに話あるって』
引退したサッカー部の先輩から、突然の御呼びだし。
相手は…ミスター?!
ミスターが俺に?何の用?
…と、いうワケで。
ミスターと御対面。
そして、藤ノ宮のイジメの一件と。
その原因は、蜂谷さんが藤ノ宮に告白してデートに誘ったことだと聞かされる。
『…え?!え?!だ、だって、嵐とはただ昔幼稚園とか小学校が一緒だったってだけで…何で俺が関係あるんですか?』
もちろん、そりゃ戸惑う。
急に、イジメに走った原因が自分のせいだと言われても…。
だが、ミスターは。
嵐さんが『幼なじみ』というワードに物凄く過敏に反応すること。
行動パターンなどを狭山に調べてもらった結果、何につけても蜂谷さんが絡んでいることを伝えられる。
そして。
『…嵐さん、今回の件は全然反省していないようだから、たぶん同じ事をまた繰り返す。蜂谷くんも気を付けて見てあげて』
と、忠告されたそうだ。
『気を付けて見てあげてってさー。あっちが俺に何も言ってこないのに、何をどうしてやるんだよ。ミスターも酷だよ。…でも、ミスターの言うとおりになっちゃったけどね。そこは反省してる』