王子様とブーランジェール



はっきり言い過ぎじゃないか?

優しいのか何なのかよくわからんので、さっきのセリフ取り消したい。

…でも、自分の悪いところをはっきり言ってくれる人の存在って、実は結構有難い存在なんだよな。

俺にも約一名、いる…。



『…で、高校で再会して、話しかけられたんだけどさ。俺…覚えてなかった。あんた誰?みたいな?』

そう言って、苦笑いしている。

覚えていない…それは、傷付くかもな。

『それ、ダメじゃないすか?』

『あー。だって、名字変わってんだもん。母さんに聞いてようやく思い出した感じ。6年だよ?6年』

そう言われると、無理もないような気もするけど。

6年の歳月は、短いようで長い。




…それからというもの。

蜂谷さんの高校生活には、ちらほらと嵐さんが絡んでくるようになったという。

蜂谷さんの新しく出来た友達と付き合ったり、同じサッカー部の先輩や、同学年のヤツと体の関係を持ったり、付き合ったり。

何となく、遠回しに視界に入ってくる…。

顔は合わせても、向こうから話しかけてくるワケでもない。



何。この遊び人。

幼なじみだけど。



そんな認識でしかなかったという。



そんな中、ちょうど一年前の話だった。



『蜂谷、ミスターがおまえに話あるって』



引退したサッカー部の先輩から、突然の御呼びだし。

相手は…ミスター?!

ミスターが俺に?何の用?



…と、いうワケで。

ミスターと御対面。



そして、藤ノ宮のイジメの一件と。

その原因は、蜂谷さんが藤ノ宮に告白してデートに誘ったことだと聞かされる。



『…え?!え?!だ、だって、嵐とはただ昔幼稚園とか小学校が一緒だったってだけで…何で俺が関係あるんですか?』



もちろん、そりゃ戸惑う。

急に、イジメに走った原因が自分のせいだと言われても…。



だが、ミスターは。

嵐さんが『幼なじみ』というワードに物凄く過敏に反応すること。

行動パターンなどを狭山に調べてもらった結果、何につけても蜂谷さんが絡んでいることを伝えられる。



そして。



『…嵐さん、今回の件は全然反省していないようだから、たぶん同じ事をまた繰り返す。蜂谷くんも気を付けて見てあげて』



と、忠告されたそうだ。






『気を付けて見てあげてってさー。あっちが俺に何も言ってこないのに、何をどうしてやるんだよ。ミスターも酷だよ。…でも、ミスターの言うとおりになっちゃったけどね。そこは反省してる』



< 689 / 948 >

この作品をシェア

pagetop