王子様とブーランジェール




一人になりたくて、一人になってみたけど。

人間ってヤツはめんどくせー生き物で。

一人になってみたらなってみたで、思考はあっという間にネガティブになってしまい。

今日もただ、一人で淋しいと思ってしまう。



…しょうがないんだ。

それは、自分で選んだことなんだし。



しかし、そう言い聞かせても、ほんの少しの温かみだけでも…欲しくなる。



(桃李…)



…一人の時の淋しさに限らず。

普段から気を張っていて、ふと疲れたなと思った時とか。



そんな時、桃李のことを考えると、頑張れたりしたんだよな…。

その優し過ぎる温もりが心地よくて。




…だけど。

それは、今の俺には美しすぎる。




こんなチキンな俺には到底もったいない。



…そして。

今回の件で、俺は。





《あんなことされても平気だからっ…夏輝は悪くないからね?》





桃李に、大切にされていたことに気付いてしまった。




…誰だ?アイツが俺に興味がないって言ったのは。

恋愛感情どうこうは別として。

ただ、優しすぎるだけなのかもしれないけど。




きちんと、見ていてくれていたじゃねえか…。




桃李なら、何を言っても結局許してくれる。だなんて。

心の奥底では、思っていたんだ。きっと。

逆に、俺が甘えていたのかもしれない。



今更気付いたって、もう遅い。



一番許されないヤツは、俺なのかもしれない。










(………)




あれから、寝落ちしてしまったのか。

何を知らせているのかわからない予鈴で目が覚めた。

ボーッとした頭を抱えながら、ローテーブルに置いといたスマホに手を伸ばす。

時間を確認すると…昼休みは始まりの予鈴か。

腹も減ってる。弁当だ。弁当。

冷蔵庫が使えるとわかった途端、冷たい麺も持ってきてしまった。



冷蔵庫を開けながら、スマホの着信をチェックする。

…LINEの着信が膨大だ。

理人はもちろん、陣太、咲哉まで。

何も言わずに2時限姿を消したら、さすがに驚かれるか。

すると、手に持っていたスマホが急に震えだして、少しビックリさせられる。

咲哉だ。

慌ててテーブルに弁当を置いてから、電話に出た。



「おつかれー」

『…おつかれーじゃねえよ!何してんの!どこにいんの!』



電話の向こうの咲哉は、声が怒っている。

やば…。

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