王子様とブーランジェール



「ごめんごめん。昼寝してた」

『…昼寝?!…授業サボってか!…ずるいぞ!』

は?ずるいぞ!って…。



とりあえず、宥めようか…。



「悪い悪い。昼終わったら教室戻るから」

『どこにいんの!』

「それは…まあ、うん。まあまあ」


まさか、秘密の小部屋にいるとは言えず。

濁して誤魔化してみるが。

だが、それは通用しないようだった。


『何を濁してんだ!俺に言えないような場所にいるってか!』

「ごめんごめん。まあ、後で戻るから」

『バカヤロー!居場所突き止めてやるー!』

えっ…。



すると、重い殴打音がドアの向こうで響いていた。

ドンドンドンドン!と、桁たましく。



な、何事だ!



小部屋のドアを開けて、階段に出る。

突き当たりにある鉄扉が、ドンドンと音を鳴らしていた。

ま、まさか…。



『そこにいるのはわかってんだぞ!開けろ!』



咲哉の声だ…。

な、何でわかった?!



『おーい夏輝!…とりあえず入れてくれー!』



陣太の声もする。

二人で来たのか。



二人がかりで鉄扉をドンドン叩く音は、未だ続いている。

秘密の空間なのに。

そこで騒がれたら、バレるだろ!



「わ…わかったわかった!…だから、静かにせい!」



慌てて階段を降りる。

ドア越しに話しかけて確認をした。



「…おまえら二人だけ?」



すると、陣太の平然とした声が返ってくる。



「おう。俺と咲哉だけ。嘘じゃねえよ。だから開けてくれ」



…本当か?

開けたらまさか、いろんなヤツが大集合してるとかないよな。



その鉄扉の鍵を開け、恐る恐る扉をちょっとだけ開く。

確認するように、覗き込んだ。



「おいおい。警戒たっぷりだな。本当に秘密の部屋なの?」



開いた扉の隙間には、陣太の顔が。

近い。やたらとアップなんですけど。



本当に二人しかいないようなので、とりあえず中に招き入れて再び施錠する。

中に入った二人は、辺りをキョロキョロと見回していた。



「マジ。普通の屋上じゃん」

「おい、おまえら。何でここがわかった」



すると二人は顔を見合わせてから、こっちを向いて答える。



「理人が言ってた。ひょっとしたらここにいるんじゃないかって」

「よくわかったよな。理人、夏輝のことなら何でもわかってんな」




理人か。

まあ、アイツにしか喋ってないから、そうかなとは思ったけど。




< 693 / 948 >

この作品をシェア

pagetop