王子様とブーランジェール
「そういうワケで。一緒にお弁当食べましょ?」
そういうワケでって、ランチしましょって女子みてえ。
でも、秘密の小部屋で男三人、テーブルに弁当広げてランチタイム開始。
理人から大まかな話を聞いていたからか、先週の件について、そんなに突っ込まれたことを聞かれることはなかった。
だが、肝心なことはズバッと聞いてくる。
「で、神田とは距離を置くって、夏輝に出来るワケ?あんなに構ってたくせに」
「そうそう。人の命獲る寸前までやるくらい固執してたくせに」
人の命…一学期の咲哉に対する暴挙か?
「…その節はすみませんでしたね。でもそうするよか他ないだろ。過激な女子がどこに潜んでるかわからないんだから」
桃李をこれ以上、危険な目に合わせるワケにはいかない。
もし、また同じ事が起きたら、きっと俺は…何をするかわからない。
「…違うと思うんだけどな。それ」
咲哉はまたしてもムッとしている。
「そうじゃなくね?それ」
「…え、何で」
「おまえ、それでいいの?自分を犠牲にしてるようなもんじゃん」
「いや、だって、こうすれば、そのうちほとぼりは収まるだろ。それに、俺が原因だし…」
「ふーん…」
何だかしっくりこない、といった反応だ。
何が言いたいんだろうか。
ちょっと沈黙になったが、それを破るように、陣太が「…あっ」と声を出した。
「そうだ。しばらく昼はここで過ごすんだったら、俺達も一緒にいようぜ?一人は淋しいだろー」
「…え?マジ?」
いきなり話を変えてのこれ?
なんて図々しい…。
まるで、勝手に家に上がって、人んちの冷蔵庫を勝手に開ける田舎の近所のおばちゃんだ。
「ダメ?秘密の小部屋で弁当や菓子食ってゲームしようぜ?咲哉、サッカー部の誰か連れてこいよ。ゲームすんならあと二人ぐらいいたら楽しくね!」
「はぁっ?!」
「引きこもり、やるならとことん楽しもうぜー?秘密基地秘密基地」
陣太、どんどん振ってくるな。
秘密の小部屋の住人を増やそうとするな。
秘密基地気分を味わいたいのか?
…でも、一人でいたら、ネガティブなことばかり考えそうだから。
有難いといっちゃ有難いのだ。
「…ははっ。ゲーム何持ってくんだよ」
思わず笑えてしまった。
おばちゃん並みの図々しさに。
「とりあえず、家帰って何か探してみるわー」
「人生のゲームがいいんじゃね?」
「それ、長丁場になるだろ」