王子様とブーランジェール
「な、な、な、夏輝!」
目を丸くして、ビックリした表情を見せる。
怒鳴られたぐらいでビビってんじゃねえ!
この散らかし具合の方がビビるわ!
すると、今度は俺に泣きついた。
「な、な、なつなつ、夏輝!スマホ、ケータイ、スマホないよぉーっ!」
「落ち着け少し!ポケットの中見てみろ!で、スマホもケータイも同じだ!」
「え」
桃李は自分のブレザーのポケットに両手を突っ込んでごそごそとまさぐる。
「あ、あった」
ポケットの中からは、スマホがあっさりと登場した。
…やっぱりな!
「マジ、一発で見つけるか?普通」
「大体わかる!桃李がスマホをどこにしまうかぐらい!いつも同じパターンだろ!もしくは机の中!」
「よく見てんね」
これて万事解決。
と、思いきや。
「あ、なぁーんだ。ここだったんだー」
そう言って、「えへっ」と笑う。
…ぬおぉぉーっ!!
俺のイライラはMAXへと達した。
「…おまえこの!ろくにきちんと探しもしないで何やってんだおまえは!しかもクロワッサ…いや、黒沢さん巻き込んで!もっとしっかりしろ!」
「え?え?な、何で?な、何で怒るの?」
「何で怒る…おまえぇぇっ!人様に迷惑かけてんのわかんねえのか!黒沢さんに!」
「え、えぇー!ご、ご、ごめんなさいぃ夏輝ぃ!」
「俺じゃなくクロワッ…いや、黒沢さんに謝れ!」
「いや、竜堂くん、私は別にいいの」
急に怒りだした俺をクロワ…いや、黒沢さんが宥める。
…あぁーっ!どうしても黒沢さんをクロワッサンと言いそうになってしまう!
俺に怒鳴られた桃李は、「ふにゃあ…」と、泣き出しそうになっていた。
ちっ…またか!
「まあまあ夏輝、そんなに怒るなって。桃李も反省してるって」
「…反省?理人、こいつ、えへって笑ってたんだぞ!えへって!」
「あー…」
もうフォローする言葉もなくて、理人は苦笑いを続けるしかない。
「とりあえずな?自分の身の回りのことぐらいしっかりやれ!ちゃんとしろよ!」
「は、はいぃっ!」
俺に怒鳴られて、桃李は頭をすくめる。
「それから!眼鏡ずれてる!人前で絶対眼鏡をはずすな!」
「は、は、はいぃっ!」
俺に言われた通りに眼鏡を両手で直し、そして、慌てて散らかした私物を両手で大雑把にかき集めていた。
黒沢さんも一緒になって手伝っている。
はぁ…何だその大雑把さ。
ため息出るわ。