王子様とブーランジェール

ずっとあなたが好きだった







あれよあれよと、急かされるがままに靴を履き替えて、正面玄関口を出る。

「夏輝!早くしないとみんな待ってるよ!」

「ち、ちょいまって…」

突然の展開で、いったい何の事やら。

目まぐるしく、頭が着いていかない。



一年だけで観楓会…もとい、親睦会?



よく見ると、6時限目の最中にお知らせのLINEが流れている。

大河原さんとLINEしていて気付かなかった。

あの人、意味もなくスタンプ連打してくるから、気付かなかったわ。




咲哉とあゆりに引っ張られて、校門付近に連れて行かれる。

すると、そこには。



「おつかれー」

「夏輝と咲哉とあゆり来た。これで全員?」



ズラリと並んで集まっている、サッカー部の一年連中。

加えて、もう一人のマネージャーの圭織。

最後に登場した俺達に「おつかれー」と手を振っている。



ホントにやるの?観楓会。

いいえ。親睦会。



「じゃあ行きますかー」

「そろそろバス来るぞー」



マネージャー含め、計20人でぞろぞろとバス停に向かって歩く。

何だかリアリティー出てきたぞ。

ぞろぞろ歩くその様子を見守るように、後ろに着いて歩く。



合コンに行くはずだったのに。

なぜかみんなとボーリング行くことになっちゃってる。

なんか、不思議。



「夏輝、呆気にとられてるみたいだけど、大丈夫?」



俺の横にいて、そう話しかけてくるのは。

マネージャーへの密告者。

咲哉だ。



「あのなぁ、おまえ…」

「…何?ひょっとして、金持ってない?貸す?」

「いや、ある…」



呆気にとられてるみたい?

そりゃ、呆気にとられるわ!

こんな目まぐるしい展開。



「大会近いしよ?たまにはパーっと遊ぼうぜ?」

「………」



パーっとか。

まあ、大会直前の一致団結も悪くない…。

…いやいや。

だからと言って、急すぎるだろ!



これはもう、意図的なものに思えて仕方がない。



お知らせのLINEの発信元は、あゆりだ。

咲哉とあゆりの間で、何かが話し合われたのは、間違いない。



俺を合コンに行かせないため?

…いやいや。

だからと言って、それはみんなを巻き込みすぎるだろ。

この20人の人数。巻き込みすぎだろ。




《それは違うだろってさ》




…何が違うというのか。

俺、何か違うのか?




「…おー。バス来た。乗るぞ乗るぞ」

「飲んだら乗るな!」

「バスには乗れよ…」




…こうして、突然として計画された観楓会、もとい、秋の親睦会が始まるのだった。

何も、大人の飲み会風に言わなくても…。

観楓会。



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