王子様とブーランジェール





…その後、全員ゲームを終えて、メシを食いに行くことになった。

あゆりが近くのハンバーグ屋を20名分すでに予約しておいていたらしい。

本当に、気が利くな。



そんなあゆりは、いつの間にか俺達部員の輪の中に戻ってきていて。

咲哉もいつの間にか戻ってきていた。

二人とも、みんなと笑い合ったりしていて、何もなかったかのように、振る舞っていた。

それは、ハンバーグ屋に入っても、何ら普通で。



さっきの事が心に引っ掛かってるのは、俺だけ?みたいな。




「…げっ!夏輝、まさかのおかわり?しかもライス大盛別注文か!」

「ハンバーグ屋で新しくおかわりするヤツ、初めて見たぞ…」

「体が資本よ!みんなも夏輝を見習ってたくさん食べなさい!」

「わぁー。あゆり金払って。奢って」

「男のくせに、女に奢らせる気?」

「わー!恐っ!すみませんでしたー!」

「よろしい」



あゆりも、いつもと変わらないんだけど。

いつものように、笑顔を見せてるのにはホッとさせられるが。

…でも、少し目を腫らしている。

あれからも泣いたんだろうか…俺がフッたせいで傷付けてしまって。

そう思うと、何だか…罪悪感が。

そんな気分を誤魔化すかのように、ハンバーグを食って食って食いまくる。

他人のハンバーグにも手を出すザマ。

「わっ!夏輝、俺のチーズバーグのチーズ乗ったところ目掛けて横取りすんな!」

「あんだけ食ってんのに…とんだ食欲モンスターだ!」

「この世は弱肉強食だバカヤロー!」

この罪悪感地獄。

もう、食べないとどうしていいかわからない。






「…あーっ。食った。食ったわ」

「明日は朝練あるし、家帰って寝るだけですな」

「あ、でも夕練は自主練なんだろ?」



ハンバーグ屋を出て、みんなでのらりくらりとふざけながら歩いて、地下鉄の駅へと向かう。

気付けば、時間は夜の8時だった。

大勢でぞろぞろと階段を降りて地下街に出る。

「東西線あっちだから、じゃーな。おつかれー」

「東豊線もそっちだし。はい、おつかれー」

みんなが次々と捌けていき、それぞれ帰路につく。

残った何人かで地下鉄すすきの駅へと足を進める。



「十津川さんの頭に付けてるヘアピン、どこに売ってんのー?」

「100均じゃね?」

「サンキだってー」

「えっ。圭織何で知ってる」

圭織や翔、幸成の世間話を横で何となく聞きながら後ろに着いて歩く。



その時、ポケットに入れていたスマホのバイブが鳴り画面を確認する。

しかし。



…は?咲哉?



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