王子様とブーランジェール




画面に映ったメッセージと前方を、挙動不審気味に交互に見回してしまった。

だって、前方には咲哉とあゆりが並んで歩いている。

でも、咲哉からのLINEのメッセージ。

スマホいじりながら歩いてはいるけど。

なぜ?こんなに近くにいるのにわざわざ?



《話がある すすきのスタバで待ってて》



…話?何?

話があるなら、ここで言えば…。



すると、再度メッセージが入る。



《あゆりを家まで送ってからまたそっちに戻るから》



な!何?



驚きでざわざわしていると、咲哉が急に振り向いて俺をチラッと見る。

そして、頷いていた。



…って。

話って…さっきのことだよな。きっと。

あゆりのこと…。

何言われるんだろ…。



ドキドキしながらいろんな憶測をしていると、地下鉄の改札に着いた。

「じゃーおつかれー!」

「また明日!」

咲哉とあゆりはこっちに手を振って、改札を抜ける。

地下鉄のホームへと繋がる階段を降りていき、先に姿を消した。

行っちゃった…。



「置いてかれた。うちらも行こう?」

同じ地下鉄に乗る圭織や翔は財布からSAPICAを出している。

「翔は真駒内からバス?」

「遠くてしんどいわー」

「うちらもだよ。…夏輝、帰るしょ?」

帰りが同じ方向の圭織に、ふと声を掛けられる。

「…いや、俺、ちょっとこれから会う人いるから…」

断ってしまった。

すると、すかさず幸成に突っ込まれる。

「えっ。え?まさか何?大河原さんと合流するとか?」

「…んなワケあるか!」

制服だぞ!



一緒に帰るはずだった圭織達を改札で見送ってから、咲哉に指定された場所へ向かう。

とは言っても、すすきのスタバは改札のすぐ傍にあって、数秒で到着。




…咲哉。話って何だ?

だいたい想像はついてるけど。

改まってサシで話とか、恐いんだけど。



そんなことを考えながら、トールサイズのアイスコーヒーを注文して、奥の席に一人座る。

一息ついた後、アイスコーヒーを口にした。

濃い目でパンチがあって美味い。

一人でスマホをいじりながら、友人を待つ。

って、本当に来んの?

まさか、そう見せかけて本当は来ないとか?

まさか、ハメられてるとか?

イジメ?

俺達、友達だよね…?




…だが、ハメられたワケでも、イジメでもなく。

40分後に、友人は本当に戻ってきた。




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