王子様とブーランジェール
悪戯にも哀を知り、ヤツといたい意味がわからなくなっていた…のかも、しれない。
「…おまえのそれ、『何があっても、すべての敵から桃李を守る!』に、ならねえの?」
「…え?」
「それが夏輝らしいと思うんだけど?それでこそ超俺様、小生意気な夏輝じゃね?」
「………」
…それ、褒めてんの?ディスってんの?
腑に落ちない。
でも、俺らしさ…か。
あゆりにも言われてたな。
確かに。
『俺のせい』がなければ、そう豪語していたと思う。
「…なぁ、夏輝」
「…ん?」
「恋愛ってやつは人の心が動いてっからさ?心が砕けて、勇気も自信も無くすこともあると思うよ」
咲哉は、啜って無くなったフラペチーノのカップを横によけている。
「…でも、挫けながらも、傷付いても、強く生きていかなくちゃならない。それが大人になるための、成長するための毎日だから」
…そんな『俺のせい』からも。
そんなもの振り切って、強く立ち上がらなければならない。
…本当に守りたいのなら、そんなもの振り切って飲み込んで、守っていかねばならないんだ。
「傷付いても…傷つけられても、俺達、前に進めるんだよ」
「………」
「だから考え直せ。自分の想い、押し殺すとかやめてくれ。正直見てらんねえ」
…傷付いても、そこから何かを考えて生きていける。
傷付けてしまったら、その後どうするか。
それを考えて…前に進んでいかねばならない。
のか…。
…いや、俺。
わかってたはずだ。そんなこと。
でも、弱気にさせられる材料があったから、前が見えなくなって、逃げ腰になってた。
だっせぇな…。
「まあ、俺がこう言えるのも、あゆりがおまえを好きだと知って、失恋して傷付いたけど、いっぱいいっぱい考えて考えた答え…だからかな?俺も強くなったよ」
そう言って、笑顔を見せる咲哉は、何だか頼もしい。
負け神、笑神だけどな。
「俺もこの失恋きっかけで、心が成長したの。そんなとこ」
「咲哉…」
「…っつーか!俺、まだ諦めてないからな?あゆりのこと」
「え…」
「これから攻める。攻めまくる。失恋の痛手につけこむワケじゃないけど。告白するまでは絶対に諦めない」
「…早く告れよ」
「いやいやいや。それは様子見てから」
「それこそチキンだろ」
「策士と言ってちょうだい」