王子様とブーランジェール




《諦めなければ何とかなる!》



それ、諦めの悪い俺の売り文句なのにまんまと取られた。

それだけ自分が自分じゃなくなっていた、らしくなかったってことか。



だけど、気付いたから。

それはもう、終わり。




「…あの、みんなには悪いんだけどさ」




こんなに盛り上がってんのに。

少しばかりの申し訳なさを感じながら。



「ここ、今日で一旦閉鎖…してもいい?」



だって、傷付けたって前に進めるのなら。

少しでも進みたい。

前を向いて。




「ごめん。今日でプチ引きこもりやめる」




いつまでも逃げてたって、仕方ないから。

何も…変わらないから。



みんなは、俺の方を見たままシーンとなってしまう。

何が何だかわかってない感じか…?



「夏輝…」



そんな沈黙の中、咲哉はバッと立ち上がってこっちにやってくる。

右肩をドンとどつかれた。




「…待ってましたよ、そのセリフ」

「え?」

「とうとう下界に降りる気になったか」



それって…?



「夏輝くんのお守りは今日で終わりですか」

やれやれ…と、陣太がため息をついている。

他の連中もニヤニヤと笑っている。

「な、何だよそれ…」

「理人に言われてた。『夏輝が引きこもりしたらよからぬ方向に行きそうだから、見張ってて』って」

「何っ!」

じゃあ、この小部屋の住人は…理人の差し金だったワケ?

翔と幸成もケタケタと笑っている。

「いやぁー。和田、おまえのことわかってんなー。何かあると引きこもりグセあるって本当だったんだ」

「合コン行きそうになってたしなー」

「…それは、幸成おまえが大河原さんにLINEしたからだろ!」

「でも行くっつったのは夏輝だろー?御乱心するなよー」

「御乱心!」



そういうことだったのか…。

理人のヤツ…余計な。

って、前科あるから仕方ないことか…そうか?



「まあでも、昼休み終わるまではまだ時間あるから、ゲームの続きしよーぜ?これがラストゲーム」

「今度は最下位脱出するわ!」

「やめて。咲哉が最下位じゃないの面白くないからやめて」



そうして、昼休み終了のチャイムと共に。

約7日のプチ引きこもりも、終了。



とうとう下界に降りる(…)。



…しかし。

この引きこもり終了は、どういう意味なのかというと。



ただ、前と変わらず、昼休み教室にいる。

…というだけではない。



桃李とのこともどうにかしなくてはならない、ということだった。




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