王子様とブーランジェール




防御のために、理人の振り回した椅子の足を掴んで離さず。

しかし、理人も振り回した椅子を俺に向かって押し付けているため、掴んだ手に力が入ってしまう。

叫んで呼び掛けるが、椅子の向こうの理人の目は座ったままだ。




何?

ひょっとして…怒ってる原因、俺なの?




その事に気付いた時。

理人がボソッと呟くように、口を開く。




「桃李は帰った…」

…帰った?

「な、何で?」

「…おまえのせいだよ。このゲロしゃぶヤロー」

「………」





ヤバい。

ゲロしゃぶヤロー…久々に聞いたぞ。

なぜ、俺がゲロしゃぶヤローなんだ。

不快なんだけど、その根源、知りたい。





しかし、理人がこのセリフを口にするということは。

俺に対して、ガチギレしている証拠…!




「…わっ!…おい!」



不意に、更にグッと椅子を押し付けられ、一歩後退してしまった。



「…てに…出ろ」

「…え?え?」

「…表に、出ろ!」












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