王子様とブーランジェール



『かれこれ一週間ですわよ?授業以外でお姿をお見せにならないのは…!』

『人目に触れられたくないなんて、余程傷付いていらっしゃるのでは…』

『フリージア、夏輝様不足なんだけどー』

『…あなたの不足感などどうでもいいですわ!この鏡餅女!』



おがさわらさんはプンプン怒ってるみたいだけど、周りにいるお友達はしくしくと悲しんでいるみたい。

でも、後ろにいる男みたいにデカいフリージアさんは、一人でニコニコしながら、夏輝の写真を見ている。

フリージアさんって言うの?

お花の名前…。



しかし、そんな女子たちへ理人が冷たい一言を放つ。



『あんたらね、夏輝を甘やかさないで。ただのチキンでイジケ虫になってるだけだから。だっせぇ男だよ?』



理人はいつも夏輝に対しては辛口だ。

しかし、おがさわらさんは反論する。



『和田様!だっせぇとは何ですか!夏輝様のお心はお美しくて、繊細で儚いだけとのことじゃないですか…』



おがさわらさんはそう言って嘆いているけど、目の前に立つ理人は、笑いを堪えている。

嘆いている人を前に、真剣に笑いを堪えているよ。

『夏輝様がイジケ虫とかかーわーいーいー。夏輝様チキンなら食べちゃいたぁーい』と、後ろでフリージアさんがはしゃいでいた。

フリージアさん…肉厚だ。




『麗華…おまえらなぁー…』



そこで、黙って話を聞いていた狭山さんが口を開いた。



『あの件は、あれで終わりだ。嵐とそのお仲間の悪事を竜堂の前で暴露して、とっちめたではないか。おかげで嵐はあれから学校には来てない。ガタガタ騒ぐな』



胸がドクッと波打って、ズキッと痛んだ。



あの件って…あれ、だよね。

私がセンパイがたにイジメられていて。

…私は気が進まなくて嫌だったんだけど。

それを知った狭山さんが、『逆にあやつらを失墜させようではないか!バカめ!』と言って。

敢えて、夏輝をその現場に呼んで、逆にみおさんやセンパイがたを追い詰めるという…。

みおさん、学校来てないんだ…。



『…終わり?…エリお姐様、何を言ってるんですか!終わってないからガタガタ騒いでいるのですよ!』

『はぁ?』

『夏輝様は!自分のせいで、神田があのような仕打ちを受けたと自責の念にかられて傷付いていらっしゃるのです!…だから、こうして人目に触れないところへ身を隠して…』



(え…)



ひょっとしたらとは思っていたんだけど。

やっぱり、そういうことだったの…?



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