王子様とブーランジェール
そして、夏輝に見立てたさるぼぼちゃんを相手に、お話し合いの練習、原稿の暗記を始めた。
頭の中は、ごちゃごちゃだけど。
『は、は、は、はいけい!りゅうどうなつきさまー!ほんじつはおひがらもよろしく、くもまくり…あ、間違えた』
『さ、さ、狭山さんが、あいてをたおす機械を与えてくれたのでーあります!』
夏輝に見立てたさるぼぼちゃん相手に、しばらく格闘した。
『ほんじつはミトコンドリアもよろしく!…あっ』
隣のページに書いてあるミトコンドリアを間違って読んでしまった。
これ、消さないと。
私のおバカな頭では、練習は難航する。
そのうち、さるぼぼちゃんがポロっと倒れてしまう。
『…あっ!』
夏輝ちゃん…あ、さるぼぼちゃんが!
(はぁ…疲れた)
ちょっと、喋りすぎて疲れた。消耗した。
そして、さるぼぼちゃんを抱いたまま。
いつの間にかその場に横たわってしまい。
そのうち、昼寝をしてしまった。
ノートやカバンなどを散らかしたまま。
あぁ、こんな中途半端。
私、大丈夫かな。
何やってんだろ。
チラッと空を見上げる。
今日は曇り空。快晴の青は見えず、白い雲たちに敷き詰められた空だ。
空は今日もこんなに白い?のに。
何だか、うまくいってない。
ような、気がする…。
うとうととしてしまった。
そして、ガシャン!と響く、けたたましい音で目がさめる。
『…わっ!』
物音で体がビクッと震え、慌ててバッと体を起こす。
反射で辺りをキョロキョロ見回してしまった。
今の何?!
凄い物音した。
『…おまえ!この!…理人ぉーっ!』
ドスの効いた低い怒鳴り声にも、体をビクッと震わせてしまう。
しかし、それは。
(…夏輝?)
何よりも聞きたかった、大好きな人の声だった。
さるぼぼちゃんを持ったまま立ち上がり、その声の方へと歩いてみる。
人の気配と声がするのは、向こうの校舎の屋上だ。
すると、その姿が見えてきた。
夏輝と…理人?
兄弟のように仲良しのいつもの面子だ。
しかし、夏輝が理人に掴みかかっているのを見て焦ってしまう。
ケンカ…ケンカだ!
ダメ!ダメダメ!
どっちか死んじゃう!…いや、恐らく理人の方が死んじゃう!
殺し合い、ダメー!