王子様とブーランジェール
『親戚、ですか?』
『言いたくもありませんが、双子です』
『双子!』
男子と女子の双子。
双子、初めて見た。ビックリ。
似てない…と、思いきや、並んでいる二人をよく見ると、所々顔のパーツがそっくり。
なるほどと感心させられる。
そんな彼女との会話は、集団下校の最中も続いた。
『神田さん。下の名前は何とおっしゃるのですか?』
『し、下の…と、桃李…です』
『とうり?変わった名前ですね。漢字は?』
『あ、桃に李です…』
『ももにすもも。可愛らしいですね。あ、同級生なんで敬語は止めてください。私の敬語は癖なので気にしないで下さい。これがニュートラルなのです』
『あ、そうなんですか…』
すると、私達の会話に下級生の女の子が入ってくる。
『ねーねー!桃李ちゃんちパン屋さんなのー?』
『は、はい…』
『里桜、私と桃李の会話に入ってこないでください。邪魔です。消えて下さい』
『えー!』
『おい、秋緒!消えろってひどくね?里桜は年下だぞ!』
双子であるイケメンが、秋緒を咎める。
秋緒はしれっとしていた。
『やかましいです、夏輝くん。私と桃李の邪魔をするならあなたも消えて下さい。死んで下さい』
『はぁ?!』
『やめとけ夏輝。秋緒が久々に友達になりたい子を見つけたんだから。放置するしかない』
私、気に入られたのかな。
でも…話し掛けてくる人が現れて、よかった。
同じ方向の生徒たちが集まって、集団で下校する。
これが、集団下校。
何のため?と、新しく友達となった秋緒に聞いてみると『防犯訓練の一環です』と教えてくれて、それが何だか嬉しかった。
そして、家が近くなるとそれぞれその集団から離れ、見送られて帰路につく。
『あれ?理人くん、家過ぎましたよ?帰らないのですか?』
私の隣にいる秋緒が立ち止まって振り返る。
後ろを歩いていた男子に声をかけていた。
彼は、先程秋緒と一緒にいた一際背の高いイケメンだ。秋緒と同じクラス。
ゲロしゃぶ…いや、秋緒の弟とは違うタイプのイケメン。
アイドルというよりは、ライダー俳優系だ。大人っぽさを感じる。
その彼、理人くんは、含んだ笑いを見せる。
『家に帰っても誰もいないし?だったら桃李んちの新しいパン屋さん見に行こうと思って?』
衝撃が走った。
もう下の名前呼び捨てで呼ばれてる…ではなく。
うちの店に?!
すると、秋緒もフッフッと笑いだした。
『それは奇遇ですね。私もです』
え、えぇーっ!