王子様とブーランジェール
前村先生の理不尽な暴力による事件があり、夏輝が学校に姿を見せなくなった時は。
クラスは一時混沌とした。
それはまるで、太陽の光を奪われたかのように。
でも、3週間過ぎたのち、夏輝が学校に来るようになると、みんな次第に明るさを取り戻し。
夏輝を中心に、クラスがまとまる。
その光景を見て、なんて凄い人なんだろう、この人。
としか、思えなかった。
人を惹き付け、元気を与える。
凄い影響力。
私には無いものをたくさん持っている。
ただ、ただ尊敬でしかなかった。
そう思った反面。
私のせいで夏輝が不登校となり、みんなから光を奪って混沌とさせた。
そんな罪の意識に晒される。
私は、ダメ人間だ。
だから、夏輝を傷付けるようなことになった。
もう…迷惑をかけたくない。
お荷物になりたくない。
そんな思いもあってか、私は夏輝から一歩離れたところにいるようになった。
友達?こんな迷惑な存在、何を調子に乗っているのか。
こんなダメ人間、神様のような夏輝の友達にはふさわしくない。
でも、夏輝は前と変わらず話し掛けてくる。
雷も小言も相変わらず。
優しいのも…変わらず。
むしろ、関わってくることが更に多くなってきたような気がする。
でも、イライラする表情を見せる回数が増えてきた。
この間、里桜ちゃんに髪をいじってもらってたら、イライラしながら『モブはモブらしくしてろや』と言われて、だいぶ傷付いた。
イライラするなら、関わらなきゃいいのに。
でも、根は優しいから、私みたいなダメ人間、放っておけないんだ。
優しいのか、ひどいのかわからない。
…やっぱり。
前村先生に暴力を奮われたのは、私のせいだって、怒ってるのかな。
良い気持ちはしないよね。
心中はとても複雑だった。
それから、私達は時を重ね、中学生となる。
小学校よりほんの数メートル離れた中学校へと進学した。
5、6年生同じクラスだった夏輝は隣のクラスとなり、代わりに秋緒と同じクラスになる。
秋緒と同じクラスになれて凄く嬉しかったし、夏輝とクラスが離れて…少しホッとした自分がいた。
ちなみにその夏輝は、理人、凜くんと同じクラス。隣の組だった。
隣の小学校の生徒も加えて、学年の人数がグッと増えた中学校。
そんな中でも、夏輝の人気は凄まじい。
夏輝は、小学校卒業から中学校入学して間もなくの期間、身長も更に伸びた上、グッと大人っぽくなっていた。