王子様とブーランジェール


可愛さのあるアイドルイケメンから、ワイルドだけどどこか艶のある大人の男へと変わっていて。

芸能人も顔負けだ。

そんな夏輝を、女子たちは放っておく訳がない。

学校一のイケメン、モテ男になるのにはそう時間はかからなかった。






とある日の体育の時間。

体育館の真ん中をネットで区切り、男女別れて授業が行われている。

男子はバスケ、女子はマット体操。

体育の授業は、隣のグラスと合同だ。

隣のコートには、夏輝や理人もいる。




『夏輝くん、カッコいいよねぇ…』



クラスの友達が、自分たちの体操の練習そっちのけで男子の授業風景をネット越しに覗いている。

男子はシュート練習をしており、夏輝のシュートする姿に感嘆しては、惚れ惚れとしていた。

次は理人の番。軽々と飛んで入れるレイアップシュートは、サマになっている。

さすが、ミニバスのエース。


『和田くんもカッコいいし、1組豊作だよねー?1組が良かったなぁー』

『和田くん派?私は断然、夏輝派だけどー?』


そんな浮かれた話を聞きながら、私も一緒に並んで、男子の体育を覗き見。

夏輝だけじゃなく、理人も身長伸びた。

大人になっちゃって。

私は…身長はだいぶ伸びたけど、何となくまだ子供のままだよ。


そんなことを思いながら、男子の授業を眺めていると、隣にいた子が『ねえねえ、桃李』と話し掛けてくる。

『ん?な、何』

『桃李って、夏輝くんと仲良いよねー?』

『え…』

『この間、桃李のところに夏輝くん来てたでしょ?結構来るよね』

夏輝は…クラスが別れても、何かとうちのクラスに来る。

大体は、同じサッカー少年団にいた児島くんのところに来るんだけど、そのついでみたいな感じで私に小言を言って去っていく。

私のところに来ることもたまにある。



『う、うん、と、友達だから』



友達…そう言い切っていいのか。

言った後に、後悔してしまい、『友達っていうか…秋緒の弟だし』と、言い直した。



しかし、その子は『またまたー』とニヤニヤしていた。



『そんなこと言っちゃってー。夏輝くん、ホントは桃李に気があったりしてー』

『な、ないない。ないよ。イケメンがブスを好きにはならないよ。それに夏輝、カワイイ彼女いるもん。こ、こないだ手繋いで帰ってたし』

『えー?ホントー?じゃあ、桃李は?夏輝くんのこと、実は好きなんじゃないのー?』

『それもない。あり得ないよ。な、夏輝は友達の弟だし。わ、私、イケメン好きじゃないし…』



< 780 / 948 >

この作品をシェア

pagetop