王子様とブーランジェール
すると、話は突然変わる。
『ってか、何でおまえ委員会やってんの?』
またその話。委員会好きなんだろうか。
夏輝も何か委員会やってたような気がする。
だからかな。
『い、今井くんが一緒にやろうって誘ってくれたの』
『…はぁっ?!今井の方から!』
また、急にムキになり声を荒げられる。
何で…?
『う、うん。たぶん、誰もやろうとしなかったから…』
『あ、そう。で、おまえ。今井のこと好きなワケ?女送らないで塾行っちゃう男なんかやめとけよ?』
なぜそんな話しになるんだろう。
人の恋ばなでも聞きたいんだろうか。
残念ながら、私にはその惚れた晴れたがイマイチピンとこない。
『好きかどうかは今はわからないけど、今井くんはとてもいい人だよ?話も合うし、こんな私にも優しくしてくれる』
『…え。あ、そう。今は…ってか』
そして、夏輝は黙り込んでしまった。
どうやら人の恋ばなが聞きたかっただけのようだ。
ごめんね。恋愛がよくわからない。
きっと私はまだ、お子ちゃまなんだ。
そうこうしているうちに、我が家が見えてきた。
『夏輝、送ってくれてありがと』
『不審者はどこにいるかわからないんだからな?また今日みたいな事があれば、俺に電話しろ。いいな?』
正直、この危機管理能力の高さ、めんどくさい。
何で、夏輝に電話しなきゃならないの?
でも、まあ…それが、彼の優しさなのかな。
夏輝の言ってることは、間違いないと思うし。
とりあえず『はい』と、返事だけはしよう。
『は、はい…あ、ちょっと待ってて』
『あ?』
そう言って、夏輝をお店の前に待たせて中に入る。
袋に入った余り物のパンの詰め合わせを、母の了解を得て頂き、再び夏輝の待つ表へ出る。
その詰め合わせを夏輝に差し出した。
『お、お礼…』
『マジ?いいの?』
『お、お腹すいてるしょ』
『空いてる空いてる!』
『あっ…』
私から袋を受け取るなり、開けてパンをひとつ詰まんでいる。
その場で豪快に一口大きくかじりついていた。
そんな姿もサマになる。何かのCMみたい。
やはり、イケメンって凄い。
『い、今食べるんだったら、中で温めたのに…』
『今度からそうしてもらうかなー…あぁー。うまっ』
そう言って、もう一口豆パンをかじり。
夏輝は笑顔を見せる。
あのキラキラスマイルを。