王子様とブーランジェール


『あれ?理人くんって、夏輝くんや古嶋さんたちと行動するんじゃなかったっけ?』

萌香ちゃんが問うと、理人は口を尖らせている。

『古嶋、インスタ映えするところに行きたいってオシャレな建物…なんだっけな。とりあえずみなとみらいだかに行くらしい?俺インスタやんねーし。そんなのつまんねーし。小籠包食いてー。俺も今井や桃李と中華街行くわー』

『あ、そうなんだ…』

理人、自由だね…。



すると、もう一人、デカいのがやってきた。

今、話しに出てきた人が。



『理人、何してんの』



夏輝だ。理人の後を追うようにやってきた。

…実は、夏輝も同じクラスになった。

ちょっと不安。



その不安は的中し、小言と雷は倍に増える。

おかげさまで、周りにいる萌香ちゃんや智恵理ちゃんも夏輝のことを恐がってしまうようになってしまった。

今も、夏輝が来た途端、顔が強張った。



そんな周りの空気を読まず、理人はストレートに答える。



『修学旅行、インスタ写真撮るのつまんねーから、俺を中華街に連れてってって、今井と桃李にお願いしてたー』



そんな、はっきりと…!

少し離れたところには、古嶋さん…心菜ちゃんもいるのに!



すると、夏輝は私達を見回す。

『は?中華街?』

『そう。食い倒れツアーだって。食って食って食いまくれ。実は夏輝もそっちがいいんじゃね?食べるの大好きだろ』

『…へぇ』

『あ、でもおまえダメだ。夏輝が恐いって、桃李や戸上たちビビってるから。はい、さいなら』

みんなの顔色がとたんに変わった。

理人!本人目の前にして言わないで!

爆弾落とさないで!

みんな真っ青だ。


だけど、言われた夏輝も『え、えぇっ?!』と驚いている。


『…え?え?俺、恐いの?』


私達をそれぞれ交互に見ている。

私達は…何もリアクション出来ない。



夏輝はしばらく無言になった後に『…今井、ちょっと』と今井くんの肩を叩いていた。

今井くんは苦笑いで『うん、今来ると思った…』と、席を立つ。

夏輝と連れ立って教室を出ていった。

何だか、仲良しになってるこの二人。

あれからなぜか、夏輝も文化委員になったりしてたからかな。



『夏輝くん、今井くんに何の用だろ…』

『まさか、今井くん、イジメられてないよね?桃李みたいに…』

萌香ちゃんたちがこそこそ話す。

私、イジメられてるように見えるんだ…。

すると、理人が失笑する。



『大丈夫。むしろ、今井が夏輝に説教?みたいな?』



今井くんが?夏輝に?

何でだろ。



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