王子様とブーランジェール



自由奔放、空気を読まずに爆弾を落とす。

空気クラッシャー。

と、言えば理人もそうだけど。

理人と里桜ちゃんは、ちょっと違う。



里桜ちゃんは、その場その場の思いつきでの爆弾落としだけど。

理人は、空気を読んで、あえての爆弾落としなのだ。

先日の夏輝の件も、夏輝に私の友達の思っていることをあえて伝えて、夏輝に気付かせる。

本人目の前にしていたら、夏輝も余計なことを言えない。

自分の立場、相手の立場を考えた上で、ギリギリの線の話を落とす。

そこまで考えての、爆弾落とし。

空気を読んでいないようで、実は空気を読んでいる。

里桜ちゃんこそ、ホントの空気クラッシャーだ。





『そ、そうなんだね…』

圧倒されっぱなしで、こんな返答しかできない。

だけど、里桜ちゃんは構わずマシンガントークを続けている。

『あ、そうだそうだ!…桃李ちゃん、里桜のこのメイクどうー?髪も染めて巻いてみたのー!夏輝くんの好きなタイプのモデル、真似したんだー!』

『あ…似合うと思うよ』

『ホント?ありがとー!』

夏輝が、背が高くてスレンダーでお洒落なモデルみたいな子がタイプだということも、リサーチ済みらしい。

里桜ちゃんの髪とメイクは、夏輝の好きだと言っていたモデルの子のまんまパクリとなっていた。

でも、里桜ちゃんも身長160㎝とそこそこ高い。

スタイルも良くて、弱冠ギャルっぽいけど。



髪やメイクを真似しちゃうぐらい、好きなんだね。

『夏輝くん、大好きー!』って、堂々と言えちゃうぐらい好きなんだ。



里桜ちゃんは、凄いな。

尊敬しちゃう。その自信。



『ねーねー。桃李ちゃんからも夏輝くんに言ってよー』

『…え?何を?』

『里桜、夏輝くんのカノジョになりたいの。夏輝くん、今フリーで、三年生になってからカノジョつくってないみたいだしー?里桜ちゃんいい子だよ?付き合ってみたら?とか、桃李ちゃんからも言ってー?』

『………』

何てことを人に堂々と頼むんだろう。

ぶっ飛んでると言われても仕方がない。

それに、夏輝がバカな私なんかの言うこと、聞くワケがない。

その返答は、笑って誤魔化した。



『ねー?桃李ちゃんは好きな人いないのー?』

『え…』


好きな人…。

恋愛が、人を好きになるという感覚がイマイチわからない。

私にしたら、夏輝も理人も凜くんも今井くんも、みんな好きといえば、好きなんだけど。

恋愛の好きは、恐らくそうじゃない。



『…いないよ、そんな人』



まだ、わからない…かな。




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