王子様とブーランジェール



この胸のもやもやのおかげで、最近はどっと疲れる。

真っ黒いもやもやが、煙のように胸の中にフワリと立ち込めるのだ。

そして、私の周りを不快な空気が取り巻く。

体力を奪っていき、私を疲れさせるのだった。




『桃李。最近顔色悪いですね?』

『…え?そう?』



今日は、終業式。

秋緒と一緒に下校し帰路についていたが、突然顔を覗き込まれる。

『最近、何かありました?元気もないと思いますが』

『ううん。何もないよ。大丈夫』

『そうですか。とは言っても、桃李は頑張り屋さんですからね。無意識にパンへの飽くなき探究心に全てを注ぎ込んでいるのではないですか?桃李は誰かが止めないと止まらないと思うので、私は心配です』

『だ、大丈夫だよ。ちゃんとやってるよ?』

『こういう時、同じクラスでないと普段の様子はわかりませんからね。クラス別は悔やむべき事項です。あのゲロしゃぶ男がいるせいで私はあのクラスに行けなかったのだと思いますが。双子は同じクラスになれないですからね。本当に腹立たしい』

秋緒、新学期になってからずっとそれを言ってる…。

何かと夏輝を敵視している。



(………)



…この、疲れは何なのかはわかってる。

でも、秋緒には言いづらい。



『秋緒、今日は塾?』

『ええ、そうです。でも明日から夏期講習なので、時間が出来ます。久しぶりにお茶しましょう。春姉ちゃんが買ってきた高級ルイボスティー飲ませてあげますよ?』

『…うん!』




しかし、その疲れ。とうとう顔にも出て来てしまった。

最近、あまり寝られないからそれは仕方ないのかもしれない。



疲れの原因、それはやはりあの子のことだった。



『桃李ちゃん!お疲れさまー!ねえねえ聞いてー!』



その日の晩。店仕舞いと共にやってくる、里桜ちゃん。

お店が終わった後のイートインスペースで、お喋りをする。

…ううん。私が黙ってお話を聞く。



『あのねあのねー!また昨日も夏輝くんとエッチしたのー!』



付き合い始めたという話を聞いてから、ほんの数日後から。

どうやら二人は体の関係を持ったらしい。

しかし、里桜ちゃんは包み隠さず、おっぴろげてその話を自慢話のようにしてくるのだった。

体の関係の話は、体験したことない私には未知の領域だったけど、里桜ちゃんは聞いてもいないのに詳しく説明してくる。



正直、しんどい。



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