王子様とブーランジェール




文通に、口パクに、見つめ合ったり…!

何やってくれてるのだ、あいつらは…!

俺の前で堂々とイチャつきやがって!

髪ピョン男のくせに!



これ、ベタな少女マンガのまさに『恋が始まる瞬間』みたいじゃなかろうか?

『何かと近寄ってくるアイツ…でもだんだん惹かれて…』みたいな?!

俺の二番目の姉ちゃんが読んでる少女マンガみたいな!



…ぬおおぉーっ!
ムカつく!!



桃李も、なぜアイツにそんなに心を開いている?

顔赤くして怒ったり、むくれたり、笑い堪えてみたり!

俺の前では、そんな表情、めったにしないくせに!

いや、めったにじゃなく、一度も…。



(………)



…な、何か。

心の中であーだこーだグダグタ言ってんの。

悲しくなってきた…。

負け犬の遠吠えみたい…。

桃李は俺のものでもないと言うに…。

そう、俺のものじゃない…。








「随分、イライラしてたな」



授業も終わり、イライラし疲れて顔を伏せていた。

そこへ理人が話しかけてくる。

疲れてんのに、話しかけんな。

「………」

ムクッと顔をあげる。

理人がニヤニヤしながら、顔を近づけてきた。

…何でイライラしてるか、知ってるくせに!

目の前にある理人の額をバシッと叩く。

「いっ…」

叩かれた額を無言で押さえている。

「…八つ当たり?ジェラシー全開って、恐っ」

今度は理人に額をぺちっと叩かれる。




ジェラシーか。

ホント、それ以外何物でもないわ。

不覚にも、あの二人のやり取りを見て、イラッとする反面。

羨ましいと思ってしまった…。

ラブラブやってみたいと思ってもうた…!





休憩時間の合間、堂々と二人がお喋りしているのが、嫌でも視界に入る。



「…ちょっと松嶋、授業中に笑わせないでよー!」

「バカだなおまえは。そこは堪えねば、修行が足りん!」



おまえら…何で絶えずしゃべってんだよ。

話が尽きないな?

ずっと、仲良さそうに…。

仲良さそうに…。



「夏輝も少し頑張らなきゃダメじゃないの?」

理人も桃李と松嶋の微笑ましい光景を見ているようだ。

「…頑張るって、何を頑張るんだ何を。俺が『いやっほーぅっ!』とか言ってる姿、見たいか?」

「ホントだ。率直に見たくない」

でしょうよ…?


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