王子様とブーランジェール




…と、今日はこんな感じの様子ではあったが。

この数日間、桃李と松嶋はずっとこんな感じの様子が続いている。

超お調子者の松嶋が桃李をからかったり、ちょっかいかけたり。

それに桃李が反応して、いじられていたり。

そして、極めつけは。

昼休みになると、教室を出て、二人でどこかへ行ってしまう。

二日に一回ぐらいのペースで。

これには、俺も驚いたぞ?

二人でどこかに行ってしまうんだもんな?

これはもう…仲良しすぎるだろ。



桃李に関しては、もう十二分に松嶋に心を開いている。

だって、松嶋と話すときは、どもっていない。

これが決定的だったりする。



…え?何?

俺よりも上?

何?その現実…。



現実は、厳しかった。







そんなことを悶々と頭の中で考えながら。
翌日になる。

今週も最後の日、金曜日。



「宿泊研修って月曜日?」

「それ、今更確認する?」

「だよなー?ただ言ってみただけ。すぐだな」

本日の朝練も終了して、着替えて咲哉と教室に向かう。

だらだらと喋りながら、歩いていた。

教室に到着し、後ろの入り口から入ろうとしたその時。



「な、な、夏輝、おはよ」



前の出入口から、桃李が出てきた。

何やら手に箱を持っている。

現在は、8時20分。

お、桃李。珍しい。遅刻してない。

「おぉ、おはよ。どこか行くのか?」

桃李は無言でうんうんと頷いている。

「昨日のセンパイのとこ…」

昨日のセンパイ?

…あ、高瀬のゴリラ?

「…は?何しに行くんだ?」

まさか、またいちゃもんつけられたとかじゃねえだろな。

だが、桃李が持っている箱を見て、大体察しがついた。

箱にはパンダフルのロゴが入っている。

お店で、品物をお持ち帰りする際に使用するやつ。

うちにもある。

「まさかそれ、お詫びの品か?」

またしても、桃李はうんうんと頷いた。

なるほど。

『明日お詫びの品をお持ちします』とは、そういうことか。

自分でパンを作って、高瀬にお詫びとして差し出すのか。

案外、律儀だな。

ちょっとびっくりした。

今までだったら、ただパニって、お詫びするとか、助言しない限りやらなかったのに。




「一緒に…着いていくか?」



別に、高瀬のゴリラの昼飯問題は、菜月の唐揚げ弁当で解決してんだぞ。

あんな最低ゴリラ野郎に、おまえの作った美味いパンをわざわざ食わしてやる必要はない。

と、思ったが。

せっかく作ってきたんだし。

桃李一人に、あの短気な高瀬のところへ行かせるのは、一抹の不安がある。

また怒らせやしないか。

そんな考えもあり、着いていこうかと思ったのだが。


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