王子様とブーランジェール



「そんなこと言わないで、ねー?」

「…いや、行かねえし!」



魔女から逃げるべく、階段をかけ上がる。

さっき来たルート、逆戻り!

しかし…追ってくる?



「…待ちなさいよぉーっ!」



な、何だ?マジか!

距離を離さなくては!

魔女から逃れたい一心で、更にターボで階段をかけ上がる。

「嘘っ!早くない!」

魔女もびっくり。

上のフロアから、彼女を見下ろす。

「っつーか、もう行かねえし!そっちも来んなよ?!」

「やだぁー!上から見上げてもカッコいいー!ますます好きになっちゃったー!」

人の話聞いてんのかコラァ!

…キャラの総崩れって恐いな。

理性のストッパーが少しずつはずれてきてるじゃねえか。

ホント、魔女恐いわ。



…っつーか、俺。

いったい、何やってんの…?

嵐さんとじゃれ合いに行ったワケ?



底無しの深いため息が出た。




結局、桃李はホームルーム始まる直前、ギリギリに戻ってきた。

無事生還してるが…高瀬にちゃんと渡してきたのか?

聞けず仕舞いで、授業が始まってしまった。

合間の休憩時間に、どうなったか聞いてみるか。




しかし。



合間を狙おうと思っても、なかなかタイミングが掴めない。

その理由は、やはり松嶋。

一時間目終了時→松嶋と喋り倒している。
二時間目終了時→松嶋にいじり倒されている。
三時間目終了時→松嶋と教室移動。
四時間目終了時→松嶋とまた喋り倒している。

…って、全部、松嶋と常に一緒にいねえか?!

もう、昼休みになってしまったわ!

そこには、黒沢さんも混じってたり、菊地さんも混じってたり、尾ノ上さんも混じってたりしていたが。

今までは、何となくイラッとしながら見ていたから、あまり気にしなかったが。

こう気をつけて見てみると、大変なことになってるじゃねえか!



教室内では、常に松嶋と一緒…!



これは…どうしたものか。


まさか…!



(…付き合っちゃってんの?)



俺の知らない間に何が!



いや。いやいや。
よく考えろ。

付き合ってるからって、教室内を四六時中共にするなんて、あるか?

彼氏彼女とずっとイチャこくように一緒にいるのは、どうかと思うぞ?



「あ、桃李、それ新発売のミルキングかえ?」

「うん。塩レモンミルキング」

「少しよこせ」

そう言って、松嶋は桃李の持っている紙パックの乳飲料、ミルキングを奪い取る。

「あ…ちょっと!」

そして、あたかも自分のもののように、ストローに口をつけ飲んでいた。



なっ…!


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