王子様とブーランジェール


松嶋母の書いた本を借りて読んだり、アカデミーで使ったテキストのプリントを貰って、松嶋に教えてもらったり。

話し合いを通して、自分がどうなりたいかイメージをして、自分の目標を決めたり。

私は自分に対するイメージと他人から見た私のイメージが大きくかけ離れて過ぎているらしい。

その差を埋めなくてはならない。



まず、私にとって一番手強い、下僕根性と呪いの払拭を試みる。



そんなにすぐは変わらない。

最初の1ヶ月は、わかっちゃいるけど、今までの習性が抜けずにビビりどもり、下僕根性がなかなか抜けずに自信を無くして落ち込むこともあった。

でも、気付いて取り組むことはとても大切で。

それに、私には、味方がいる。




『大丈夫、桃李。次がんばろ。私も頑張るよ』

『まあまあ、焦らず行こうや。何年かかっても』




松嶋に関しては、教室でも何だかんだ一緒にいてくれて、私の友達とも打ち解けていた。

取り敢えず、最初の1ヶ月は1日置きぐらいで集中して三人で昼休みに会っていた。

7月に入るとみんな学校祭の準備で忙しくて、会えなくなっていたけれども。





…そんな中、私は松嶋に誘われて、学校祭のステージ発表に出ることとなる。




『だ、ダンス…』

『まあー。まだ一月あるぜ?練習しようや』



昼休みのいつものお話し合いの時間に。

急に『桃李、おまえさんをダンスのメンバーに入れといたから』と、言われ。

真っ青。



だって、私。ダンスやったことない。

そのダンスステージの照明係ならあるけど。

ザ・モブにふさわしいお仕事。



すると、松嶋はDVDプレーヤーをドンと出した。

え…。



『明後日、いったん放課後集まってみんなで練習。それまでにはある程度カタチにしよう』

『えっ!』



そ、そんな…。あと2日で、何が出来るのですか。

こんなモブ下僕に…。

…って、それはダメダメ。その考え方ダメ。



無理矢理とはいえ、やるしかない…。



松嶋がDVDの映像を流す。

じっと覗き込んで見てみるけど…動き速い。

運動神経ゼロの私に、出来るんだろうか。


すると、私の隣でその映像を見ていた律子さんが『あっ』と声をあげる。



『これ、知ってる。私、中学校の学校祭でやったよ?』

『マジ?同中なのに知らねえし』

『慎吾は学校来てなかったしょ。ヤンキーだったし』


< 839 / 948 >

この作品をシェア

pagetop