王子様とブーランジェール



「ちょっと松嶋!かってに飲まないでよ!」

「いやははは。少しぐらいいいじゃん」

松嶋は悪びれる様子もなく、笑っている…!



…いや、よくあることですよ?

間接キスなんて、そんなの。

だけど…。


…おまえだから、許されないわ!



イライラがK点を越えた。

スキージャンプやってるワケじゃないが。



この男…!



しかし。

松嶋がいなくなるのを待っていたら、学校終わってしまう。

今日はミーティングで部活も遅いから、パンダフルにも寄れない。

そう思ったら、早いとこ聞いておかねぱ。

朝の高瀬のことを。

現在は昼休み。

さもなくば、桃李が連れて行かれてしまうかもしれない。

焦る気持ちもあるのか、何も考えなしに席を立つ。

「…夏輝?」

フラッと桃李のところへ赴いた。

松嶋の傍にいる、桃李のもとへ。




「桃李、ちょっと」



松嶋や黒沢さんたちと談笑しているその中に。

あたかも割り込むようなカタチで突入するかのように、桃李に声をかける。

俺に声をかけられた桃李は、体をビクッと震わせると同時に「は、は、はいっ!」と、勢いよく起立した。

立ち上がる際に机やら椅子やらに、あちこちにぶつかったのか、けたたましく物音がする。

まったく…。

俺、やっぱ完全にビビられてる…。

「な、なな何っ?」

「そういやおまえ、朝大丈夫だったのか?」

「あ、あ、朝?」

「ほら。3年とこにパン持ってったろ。辿り着けたのか?」

「あ、あ、あぁ…あの、あ…」

桃李の口からは、だんだん言葉が出てこなくなり、代わって身振り手振りが増えてくる。

…ん?ん?

どうなったんだ?

身振り手振りだけじゃ内容わからないぞ?

胸の前で指で丸を描いて…それ、何を表現してんの?

「…ん?ん?それ、何?」

「あ、ほら、あ、あれあれ…」

あれあれって?

わからない!

その描いた丸は何?!



意味が不明なので、ますますイライラしてくる。

K点どころか、ワールドレコードに達しそうだ。



日本語喋れ!日本語を!



「…だから!それは何だ?…おまえっ!」

「はい、スタぁーーップ!!」



雷を、まさに落とすかのその瞬間。

俺達二人の間に割って入り、叫ぶ。

松嶋…!



…え?スタップ?細胞?



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