王子様とブーランジェール
でも…思い返してみたら、実はいっぱいいっぱい助けてくれていたんだよね。
眼鏡探してくれたり。
宿泊研修で絶壁から落ちた時にも、助けに来てくれた。
高瀬センパイにデートに誘われて困っている時にも、間に入ってくれたり。
私は気付かなかったけど…教室で倒れた時は、保健室にまで運んでくれたり。
ホント、いろいろ助けて貰っていたんだ。
それに…最近、夏輝と落ち着いて話が出来る回数が増えた。
どもる回数も減った。
こうして、前向きに物事を考えられるようになってきている。
これは、フィードバック、松嶋の『お母さんの見よう見まねコーチング』の賜物かもしれない。
松嶋様々、律子さん様々だ。
そんな中で…夏輝は『頑張れ』と、私に言ってくれた。
それに、所々、笑顔も見せてくれるようになった。
本当に嬉しい。嬉しかった。
嬉し過ぎて、張り切り過ぎて、睡眠不足で倒れてしまった。
それに、夏輝に対してはびくびくするばかりだったのに。
本当は優しい人で、私のことをたくさん助けてくれた、とか…いろいろ思い返すことが出来る。
眼鏡外した時は、『おまえ、眼鏡はどうしたあぁぁっ!』と、案の定怒られたけど。
心の余裕ってやつが出来てきたんだと思う。
昨日も…重たいザラメの箱を運んで貰いながら、普通に落ち着いて話が出来た。
《わたあめ作る機械もタダで貸してもらうんだ。明日学校に届くから教室まで運んでね》
《お、わかった》
今までびくびくしながらだった、恐れ多い頼み事を、簡単に出来てしまった。
明らかに、数ヶ月前とは違う。
夏輝のことを好きでいるのをやめる!と言って泣いていたあの頃とは。
(………)
…私、変われているのかな。
良い方向へ、歩いて行けているのかな…?
…それから、数時間後のこと。
前夜祭のステージ発表を、みんなと自分なりに頑張って頑張って、みんなで達成感を味わっていた。
発表が終わり、お腹の出た衣装を脱いで、みんなでLL教室で着替える。
『…あーっ。楽しかった!もう終わったとかさみしいー!』
『来年もまたなんかやろうよ!この学校、クラス替えないから、また来年みんなで出来るよー!』
『そうだね!…あ、桃李、もう行くの?』
『う、うん…ちょっと』
私は急いで着替えて、一味お先にLL教室を出る。