王子様とブーランジェール



そうだ。

私には、ここ最近頑張って積み重ねてきた『自信』と。

得られたモノがある。

それは、他から見たらほんのちっぽけなモノでしかないかもしれないけど。

私にとっては…かけがえのないモノだ。



頑張れる。



『これ以上痛い目に合いたくなかったら、今後竜堂くんに近付くな!』

『竜堂くんだって迷惑してんだよ!このストーカー!』

『竜堂くんはミスターなんだから、おまえを相手にするワケないだろ!ちょっと可愛いからって調子に乗んな!』

『幼なじみ?!小中一緒なだけだろ?!…何が特別なんだよ!何も特別じゃねえし!』

すると途端に、一斉にみんなで横たわっている私の全身をドカドカと蹴りだした。

痛い。

痛い。

お腹を蹴られると、痛くて息が詰まる…!



何で、こんなことされてるんだろう。





『…何やってんのよ!あんたたち!』



教室のドアがガラッと開き、怒鳴り込みながらこっちにやってくる。



『うわっ。藤ノ宮?!』

『…磯貝、三崎?…竜堂竜堂って、あんたら竜堂追っかけてる…!』

『やばっ!』

『に、逃げよう!』

『…このままで済むと思うなよ!このストーカー!』

私に危害を加えていた女子たちは、律子さんの登場で、あっという間に散っていく。

足音が遠ざかっていった。



『桃李!…桃李!大丈夫?!』

『り、りつこさん…』



律子さんが、助けに来てくれた。

体を起こしてくれるけど、ホッとして力が抜けてしまう。



そして、律子さんは、彼女たちの言ってたこと、私が一方的に蹴られている状況を見て、察したらしい。



『あいつら…竜堂を追っかけてるやつらよ。ファンってやつ…』

『え…』

夏輝の…ファン?

『ど、どうして…』

『わからない。でも、幼なじみがどうとかストーカーとか言ってたね。竜堂が迷惑してる?…こっちから願い下げよ!』

『………』

『桃李、あれはただの言いがかりだからね?気にするんじゃないよ?…それにしても、何で竜堂のせいで、桃李がやられなきゃいけないのよ…指まで踏みつけて!』



夏輝のせいで…やられたの?私?



(違う…)



夏輝は、そんなことしない。

言いたいことがあったら、直接言いにくるはず。

たぶん、あの言い方だと、彼女たちが勝手に私に因縁をつけてるんだと思う。



それは、そうであって欲しいという私の思い込みではなくて。

今までの長い付き合いがあってこそ、言えることだ。



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