王子様とブーランジェール



私の返事は即決だった。



この事を夏輝に知られてしまうよりは、狭山さんたちに全てを委ねて…戦う。



『桃李!…狭山さんも!』

『だ、だ、大丈夫です、律子さん』



もし、また暴力を受けることになっても。

そこには、覚悟を決めた自分がいた。



『わ、私…負けたくない…』



今までの自分とは、違う。

自分のことは、自分が何とかしたい。

夏輝に頼らずに。



今なら、そんな力、持っているような気がする。



『ほう…』



狭山さんは喜んでいるのか、楽しそうな不敵な笑みを浮かべる。



『おまえ。そんなに強かったんだな?気にいったぞ?神田…』



その声かけに、ウンウンと頷く。

そう、私、覚悟している。



強くなりたい。

いや、強くなる。



もう、負けない。




《うるさいぃぃっ!消えろおぉぉぉっ!おまえなんか嫌いだ!…嫌いだぁぁっ!》




…自分にも。







『…何急にだんまりしてんだ!このストーカー!』

『スカしてんの、うざっ!ムカつく!』



黙ったら黙ったで、ドカドカと蹴られる。

痛い。痛いよ。



…でも、私は耐える。



昔とは違って、今の私には、いろんなモノがあるから。





《耐えることは出来るか?》

《おまえ、そんなに強かったんだな?》




味方が、いっぱいいる。

律子さんや、松嶋。狭山さんたちもいる。




《いいね!がんばろー!》

《神田さんも眼鏡気を付けて頑張ろうね!》




私を奮い立たせる、成功体験もある。



《頑張れ》



大切な…守りたい人も、いる。

守りたい人への強い想いも…ある。




『…彼女気取りすんな!ぶりっ子ヤロー!』

『竜堂くんは、おまえなんか見てねーよ!』




…だから、耐えられる。



絶対に、負けない。





球技大会中、一日一回ペースでお呼びだしの暴行は続いていたが、それぞれ第三者が突然現れて制止して、相手が逃げてようやく治まる感じだった。

その一人が、あの、おがさわらさん。

次の日が、理人。




耐えて耐えて、耐え抜いたけど。

結局は最後に…夏輝が登場してしまった。



知られたくなかったのに。

迷惑かけたくなかったのに。



相手…みおさんたちを撃退することは出来たけど。



『本当にごめん』

『おまえ…もう、俺に関わるな』




結局、私の予想通り、夏輝は自分を責めてしまった。

傷付いて、どこかへ行ってしまった。



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