王子様とブーランジェール
(ちっ…)
女の方から告白させるとか、だっせぇな。
自ら手を汚さず、玉座でふんぞり返ってる王子様?
…そんなつもり、ねえし!
俺だって…男らしくバーン!と『好きだ!』と言ってやろうと思ってたわ!
絶対、俺の方から言いたかった。
なのに、不意討ちとは…。
それに、理人に言われなくても追い掛けるつもりだったんだからな?!
でも結局、こんなカタチになってしまった。
日頃の行いなのか、何だかは知らない。
だけど、とりあえず今やるべきことはわかっているつもり。
桃李の捕獲。
…いやいや。
後を追い掛けて、話をする。
廊下に降り立つが、生徒たちがパラパラと教室から出て来ている。
時間的に、授業もホームルームも終わったらしい。
生徒の波を掻き分け、その姿を探す。
しかし、その姿は見当たらず、四階の廊下も突き当たりまで来てしまった。
いない…。
次に、正面玄関口へと向かう。
向かう途中でも出会うことはなく、正面玄関口へと辿り着いてしまった。
靴箱…ローファーある。
指定の上靴がない。
…まだ、校内にいるのか?
辺りを見回す。
ヤツが行きそうなところ…どこだ?
全然想像がつかない。
部活もしておらず、放課後真っ直ぐ家に帰るヤツだからな。
とりあえず、辺りをしらみ潰しに探す。
二階、三階、軽く見回す。
でも、いない…。
…まさか、どっかに隠れてる?
もしそうだと、時間かかるな。
その間に逃げられても困る。
ブラブラと考えながら歩く。
その時、とある場所に辿り着いていた。
そこを見上げる。
本校舎の屋上へと繋がる階段。
…桃李は、授業をサボってまで、ここに来て。
いったい何をしていたんだろうか。
『練習』?何の練習をしていた?
てっきり、悲しみのあまり逃げたのかと思って、焦って、心配して…。
ホント、何をしていたんだろうか。
そんなことを考えてしまい、引き寄せられるようにフラッと階段を上がる。
…ここを上りながら。
俺のことを少しは考えてくれたのだろうか。
俺のことを考えてくれている…だなんて、今までに何度願ったことか。
少しでもいいから。
頭の片隅でもいいから。
俺に興味持ってほしいとか、意識してほしいとか。
ずっと…ずっと、希望として胸の中にあった。