王子様とブーランジェール



ど、どういうこと?!

さっきのは、無し…えぇっ?!



さっきのって…あの事だよな?

『大好きです』だよな?

い、いや。

桃李のことだから、何か別のことを言ってるんじゃ…!



しかし、確信、極めつけの一言を。

ヤツは大声で放った。




「…さ、さっきの告白は!…無しでお願いしますぅっっ!」




え…やはり!

やはり、あの事を言ってるのか?!



(え…)



暫時、呆然とする。

状況がすっかり引っくり返されたことに、フリーズさせられてしまう。



な、何で!

ちょっと待て!



「と、桃李?!」

「で、で、でも、明日は必ずクロワッサン焼いて、夏輝のところへお持ちしま、しますっ!」

「…いや、そうじゃなくて!」

「で、では、さ、さようなら!」

「…ちょっと待て!」

「ま、ま、待ちません!」



え…。



またしても、呆然とさせられる。



しかし、その隙にヤツは俺に背を向けて、あっという間に玄関にたどり着き、ドアを開けていた。

…早っ!




「…桃李ぃぃっ!ちょっと待てぇぇっ!!」




しかし、俺の叫びも虚しく。

ヤツはドアの向こうへと姿を消す。

慌てて後を追い、ドアノブに手をかけるが、ガチャン!と鍵をかけられてしまった。

「…桃李!桃李!…話を聞け!…コラアァ!」

だが。

そこにはもう人の気配が感じられず。



いったい、何が起こった…?




さっきの告白は無しでお願いします。

でも、明日は必ずクロワッサンをお持ちします。




いや、いやいや。

クロワッサンなんて、どうでもよくないけど、この際どうでもいい。

なぜ、ヤツがこんなことを急に言い出すのかもわからない。

何を考えているんだ…?

あのバカ…。




あれを無かったことにしろだと…?

『大好きです』無かったことにしろだと…?





…そんなこと、出来るか!





「…桃李ぃぃぃっ!コラアァァ!!」







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