王子様とブーランジェール
「って、そう簡単にバカでまとめないで貰える?」
わかっちゃいたけど、反論してみた。
だが、幼稚園からの付き合いである幼なじみの反応は厳しい。
かなりしらけた顔で俺をじっと見ている。
「…バカ以外何がある?シミュレーションはシミュレーションでも、恋愛のシミュレーションになってないだろ」
「………」
「夏輝が考えてるのは、殺人シミュレーション。考えなきゃいけないのは、恋愛のシミュレーションだと思うけど」
そうですね…って、殺人?物騒な!
二日間悩んだ俺、いったい何?
「理人くん、的確ですね!」
「何それ。秋緒の真似?」
「あ、わかった?」
双子の姉のモノマネでもして、ごまかしてやった。
いろいろ突っ込まれるのが、めんどくせー。
「じゃ、みんなと合流すっか」
「いろいろ突っ込まれるのがめんどくせーって思ったんだろ」
うっ…お見通しか。
だが、シラをきってやる。
何もコメントせずに、バケツに入った魚を川へリリースしてやった。
「ホントにおまえは…」と、呟きながら、理人も一緒にバケツの魚を川へ返していた。
ただいま、宿泊研修の真っ最中。
学校に集合して、バスに揺られること二時間。
とあるリゾートホテルに到着。
昼飯に野外でジンギスカン食べて。
ホテル隣接のアクティビティで夕方まで遊ぶ。
俺達が今やっていた釣りの他、ゴルフやテニスも出来るし、乗馬やラフティングもやりたい放題。
ツリートレッキングなどのアトラクション、他にハイキング、自転車の貸し出しもあるらしい。
好きなように遊び放題。
そして、このホテルに一泊して。
明日は移動して、近くの大規模な遊園地に行く。
そこでも昼過ぎまで遊び放題。
宿泊研修なのに、遊び放題ですね。
と、担任の仙道先生に言ったら。
『宿泊研修という名の生徒同士の親睦会みたいなもんだから。目的はそこ。この高校、昔からこうなんだよね』
と、言われた。
仙道先生は、この星天高校の卒業生だったらしい。
先生の時代と内容がまったく変わっていないそうだ。
昼飯食べた後、何する?
と、なった時。
理人に『釣りでもしようよ』と、言われた。
で、みんなから離れ、近くの川にひっそりと二人きり。
一時間以上釣りをしていたのである。