王子様とブーランジェール
ショックとイライラで、残りの夏休みを過ごす。
何をしていたかは、はっきり言って覚えてない。
しかし、休みも明けた学校では。
理人と桃李の噂で持ちきりだった。
『ねえねえ、あの二人どうなの?付き合ってるってホント?』
『和田くん優しいし、何かあの二人お似合いだよねー?』
クラスメイトからそんな話が次々と聞こえてくる中で。
俺のイライラは増し増しになる。
桃李が、他の男のモノになっただなんて…。
…こんなことになるんだったら、桃李の些細な一言で落ち込んでいる方が、まだよかった。
甘い誘惑に乗って、里桜に束縛されて腹が立ったり、桃李と会えなくなって空しい思いをしたり。
挙げ句の果てには、理人に桃李を持ってかれて。
自分のやらかしてしまったことに、後悔が止まらない。
もう、ダメだ。
キャパオーバーだ。
メンタル崩壊。
イライラのあまり、理人に絡んで、例のごとくモメにモメる。
そして、その日、すぐに里桜とは別れた。
…別れる時は、喚かれて泣かれて大変だったけど。
だが、別れた後は、なぜか清々しかった。
その後、理人と桃李の噂は、本当に噂のみだったと知ることになるんだけど。
(………)
傍にあった理人の足を、バシン!とおもいっきりぶん殴る。
『…痛っ!』と、理人は足を跳ねさせてた。
「…何?急に!すぐ拳でモノを訴えるよな?!…痛ってぇ…」
「昔のことを思い出してたら、急にイラッとした」
「はぁ?!」
「…おまえ、去年の夏祭りはよくもやってくれたな?…桃李と二人で消えるなんてよ?あぁ?」
その足で、背中をドカッと蹴られる。
「は?その話?…しつこいな。過去を振り返るんじゃないよ。いつまでも根に持って。だっせぇ」
「…あぁ?んだと!」
「それを言うなら言わせてもらうけど、その夏祭りの後、公衆便所の裏で里桜とキスしておっぱい揉んでたのは誰ですかー?」
「…は?見てたの?」
「見てたから言えるんだろ。その後犬に吠えられて里桜んちに撤収したくせに。続きしてたんでしょー?」
「何っ!…桃李、桃李は見てないよな?見てなかったよな?!」
「さあ?あはは」
「このっ…!」
もし、あれを見られてたら、俺、終わってんだけど…。
過去を振り返っても、もう遅いのはわかってる。
でも、思い出してイライラしてしまった。