王子様とブーランジェール
今度は、理人のムキムキの太ももに拳でぼっかりと、上から叩きつけるように殴る。
「痛っ!…さっきから何だよ!やめてくんない?」
「おまえ、久々に聞くけど…ホントに桃李に惚れてないだろな?あぁ?」
すると、背中に三度、今度は強い蹴りがどっかりと入る。
体が揺れた。
「久々に言われると腹が立つな?…だから!ライクの好きだって言ってんだろ?!」
「本当に本当か?!…とか言って二人で消えるからな?イマイチ信用ならねえ!」
「桃李は人間としては大好きだよ。可愛いし。ファンだもん。でも恋愛対象じゃない。あーしつこい」
「…しつこい?!…んだと!」
「話逸れてる。この話やめよう」
「………」
バッサリと話を打ち切られた。
で、何の話してたっけ。
…あ。死にそうなくらい恥ずかしい質問だったか。
「もうさ、いつから好きだったとか、考えなくていいんじゃない?大事なのは今でしょ」
「…いや、ただ聞いてみたかっただけだから…もう、いいわ」
自分から振っといてなんだが、恥ずかしすぎて瀕死の状態だから、もうやめとく。
過去にいろいろあったかもしれないけど。
長い道程だったけど。
照れ隠しとか意地っ張りとか…俺のくだらない事情で、ずいぶん遠回りしたけど。
でも今、こうしてチャンスが巡ってきた…と、思う。
理人はソファーに座り直して「あはは」と笑う。
「…まあ、いろいろ誤解を解かなきゃいけないと思うから、頑張れ」
「誤解?」
「カッとなって怒鳴るなよ?夏輝は、俺が教えてやったから桃李の気持ちを知ってるけど、桃李は夏輝の本当の気持ち、まだ知らないから」
「…あ、そうか」
「怒らないでちゃんと告白出来たら援護射撃してやるから」
「援護射撃?」
「まあいろいろあるでしょ。あ、夏輝、女に告白したことないのに大丈夫なの?」
「…理人がさっきから心配してんの、キモいんだけど。寒イボたつわ」
「そりゃ心配になるだろ。この両片想いのデキレース、いつまで見てればいいの。もういい加減にしてほしい」
「…すみませんね」
しかし、我に返る。
何、これ。
ひょっとして俺、理人にアドバイスもらってんの?
何か、またまたすっげえムカつく。
でも、やっぱりどうしても一番頼ってしまうのは、こいつ…。
どの誰よりも、この男が本当のことをはっきり言ってくれるから。
「ドラマの告白シーン集の動画見る?見ておいたらある程度参考になるんじゃね?女に告白したことのない遊び人?」
「…殺すぞ!」