王子様とブーランジェール
「あ、えっと…」
桃李は依然、モジモジし続けている。
何でそんなにモジモジしてんだよ…。
…あ、そうか。
俺のどこが好きなのよって質問したから、答えに困って…。
(…あっ)
ここで、ようやく我に返ってしまった。
俺、何てこと聞いて…!
気付いた時には、もう遅かった。
やばっ…!
「あ、あのねっ、わ、私…夏輝の優しいところ、好きです…けど…」
…あぁっ!
答えてしまった!
でも、聞いてしまった。
お、俺の…俺の優しいところ…。
好きですって…。
頭がまた、真っ白になる…。
桃李に嬉しい嬉しいお褒めの言葉を頂戴したものなら、脳内機能しなくなるってわかってるのに。
なぜ、自ら自滅の行為に走ってしまったのか。
茫然自失、危険だ…!
「あ、あと…すごく頼りになるところとか。何だかんだ冷たいこと言ってても、結局は面倒見よくて、優しくしてくれるとことか…」
…ああぁっ!
まだ、あるの?!
ダメだ。これ以上聞いたらおかしくなる。
照れ爆発。俺が崩壊する…!
「あと…」
「わかった!…わかった。もういい。ごめん…」
「う、うん…」
まったく、俺はいったい何をこいつに言わせてるんだ…。
自分のダメぶりに、頭を抱える。
そんな中、ふと桃李の方を見ると…まだモジモジして視線を少し下に落として、両頬を手で包んでいた。
あぁぁ…照れていてかわいいし。
俺にこんなことを言わされて、恥ずかしかったよな。
ホントごめん…。
(………)
…俺は、本当にいったい何をやっているんだ。
「…桃李、あの」
これじゃ、本当に。
桃李にばかりこんなことを言わせて、俺が何も言わないままなら。
本当に、玉座でふんぞり返っている悪徳王子様になってしまう。
「は、はい…」
そう返事をして、赤らんだ顔から手を離す。
「俺だって…」
自ら汚れる気は、十分。
どれだけでも、泥だらけになる覚悟はある。
「…俺だって、桃李のこと…好きだよ」
そのセリフを口にしては、吐きそうになるくらい、胸が高鳴ってきた。
しかし、桃李は目を見開いてきょとんとしている。
…きょとん顔?
嫌な予感がする。
「お、お気遣い、あ、ありがとうございます…」
「………」