王子様とブーランジェール
新しい時代と生きている
聞いてくれ。
俺、桃李と付き合うことになったんだ。
とうとう、想いを伝えることが出来て。
彼女になってくれたんだよ。
やった。
やった。やった。えへへ…。
すると、返事をするかのように『わんわんっ!』と叫ばれる。
我が家の畜生、チワワのピンクに。
…あまりにも嬉しくて、家に帰ってから、飯を食って風呂に入った後、ピンクをお部屋に誘ってしまった。
普段なら『うるっせぇ!吠えるな!』と、冷たくあしらうのだが。
こういう、人間様の都合の良い時だけ、優しくする。
で、誰にも言えない話を畜生に聞いてもらう。
わんわんっ!しか言わないけどな。
さて、ピンク。
もう寝るか。
電気を消して布団に入ると、ピンクも布団に潜り込んでくる。
しかし、肝心なことってヤツは、一息ついた頃に思い出してしまうもので。
真っ暗な部屋の中で目を閉じると、瞼の裏には今日の出来事がどんどん映し出されてきた。
…あーっ。疲れた。
いろんな事がありすぎだ。昨日から。
昨日は観楓会で、ボーリングして…あゆりに告白されて、咲哉に説教されてからの。
今日は、桃李が突然いなくなって、理人と屋上でケンカして、そしたら、桃李が突然現れて、なぜかスタンガンで威嚇放電していて。
告白されて逃げられて、それを追いかけてストーカーのように追いかけまくって、おじさんの長靴履いてまでも追いかけて…。
『…俺の隣にはいつだって、桃李、おまえがいい』
『…どの女でも、誰でもない。おまえがいいんだ』
『桃李。これからは…『彼女』として、俺の隣にいてほしい』
『ものすごく、大切にします…』
あっ…あぁっ!
ガラにもないセリフのオンパレード。
思い出してしまった…!
甦る記憶の恥ずかしさに襲われ、慌てて布団を頭から被る。
ヤバい。ヤバいぞ。
ゾーン状態だったとはいえ、あんなセリフ連発で、大丈夫だったのか…!
キャラ崩壊じゃないのかこれ!
(………)
しかし、よく考える。
そんな状態の中で、桃李に受け入れてもらえたんだから、良しなのか。
素直になることとは、すなわち。
こういうこと、なのか…。
しかし、明日。
どんな顔して会えばいいのだろうか…。
ちょっと…いや、だいぶ照れる。