王子様とブーランジェール




(………)



その姿と反応に。

ジーンときてしまった。



また、実感してしまった…。

ヤバい…。



俺と付き合っているって、桃李の口から言ってくれることが、こんなにも胸打たれるとは。

嬉しく思ってしまうとは。



ヤバい。まるで夢の世界にいるよう。

でも、夢じゃない…!




しかし、そんな夢心地気分に浸っている場合ではない。

今、目の前には病的にしぶとい敵がいるのだ。




「ふっ…ふっふっふっ…」



高瀬が突然笑っている。キモい。

笑いまで病的だぞ。

星天どうぶつクリニックに連れてくか?



「ふっふっ…竜堂。俺はまだ諦めんぞ…?」

「………」



何を言ってるんだこのクソゴリラ。

諦めない?

しぶといアピールしてんな。目障りだ。

その奇妙なゴリラの笑いに、多少イラッとして反論してしまう。



「何が諦めないだこのクソゴリラ。いつまでもしぶといな?」

すると、またしてもこのクソゴリラは笑う。

何かムカつくな。

敗者の態度じゃねえ。



「…何がおかしいんだこの病的クソゴリラ!」

「ピュアで可愛いらしい神田さんの彼氏がおまえ?…チャラ男なおまえ?…笑えるわ!」

「…あぁ?…んだと!」

「チャラ男でモテモテのミスター竜堂は?たくさんの女が寄ってくるからな?どうせ?おまえの浮気で、はい終了!てなワケだ?神田さん、可哀想に…」



…何っ!…こ、こいつ!

俺が浮気する前提?

それで、桃李とはすぐ終わりになる…?

ふ、ふざけたことを!

このクソゴリラ!




許されないわ!腹立たしい!

こざかしい…殺してやる!




「神田さん!俺、ずっとあなたを待ってます!もし、竜堂に傷付け泣かされるようなことがあれば、いつでも俺の胸に飛び込んできて…ぐぉっ!」



その続きの言葉を遮ってやった。

再び顔面わしづかみ。

本日二度目のアイアンクロー。

そのままバン!と背中を壁に叩きつけてやった。




「…竜堂!…離せぇぇっ!…見えない!神田さんの可愛らしい顔が、見えないだろうがぁぁっ!」

「うるっせぇな!桃李を見るな!…何をほざいてんだこの病的ポジティブシンキングクソゴリラがあぁぁっ!俺がすぐ浮気するだと?!どこの何を見てそんなセリフを吐くんだこざかしいぃっ!」

「おまえの!全てだこのチャラ男!チャラい髪にチャラい顔にチャラい体にチャラい香水の匂いに女がどんどん寄ってくるそのチャラさ…全部チャラいだろうがぁぁっ!」


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