王子様とブーランジェール



俺の香水の匂い?嗅いでんの?…キモっ。



「油だらけの面構えのゴリラよりは全然マシだろが!…それに、誰がおまえの胸に飛び込むか!おまえの剛毛な毛むくじゃらの胸の中に飛び込んだものなら、毛に絡まって犯されるわ!…脱毛せいやこの剛毛ゴリラがあぁぁっ!」

「脱毛?!…これだからチャラ男は困るな!とある外国では、逞しい胸毛は男のシンボルで、毛深い男の方がモテるんだあぁぁっ!」

「だーったら、その国に行っちまえよ!胸毛かざしてその国に行ってしまえ!ビザ無しで強制送還されることのないよう、しっかり手続きして二度と帰って来るなあぁぁっ!この胸毛ゴリラぁぁっ!」

「はっ!おまえはヒゲすら生えてなさそうなツルツルなお肌してるもんな?…この俺が羨ましいのか?」

「はあぁっ?!そんな汚いキモい胸毛、羨ましくなんかありませぇーん!ヒゲは何か知らねえが生えてこないんだよ!っつーか、毛の話はもういいわ!…俺は桃李とは傷付けもしないし別れない」

毛をディスってんのに、なぜかドヤ顔されて腹立たしい…!





高瀬に言われずとも。

俺は絶対に、桃李と離れる気はない。

苦労に苦労を重ねてやっと手に入れたのに、それをみすみす手離すようなことは、絶対ない。




「来ることが決してない者を一生待って一生を終えるがいいわ!ずっと病的ポジティブシンキングの中、年老いて死んでいけ!このめでたいゴリラがあぁぁっ!」



俺達が笑って幸せに過ごしている日々を、せいぜい指を加えて見ていろ。

幸せは、これから造り出す。

イチャぶり、見せつけてやる…!




「がははは!…ひどいビッグマウスだな?!チャラ男がそんな胸張って『浮気しません!』ってかぁ?!誰が信じるってんだよチャラ男の真面目宣言なんかよ!」

「うるっせぇな!だいたいゴリラは見た目だけでしか人を判断できないとは、やはりさすがに低能な生き物だな?悲しくて切なくて笑えるわ!身の程をわかってないビッグマウスはおまえだ!この口デカ切ないゴリラがあぁぁっ!」

「ゴリラゴリラよくもしつこいな?!とにかく神田さんは俺が守るぞ!…俺は神田さんを愛し…ぐぉっ!」



そのセリフの続きは、再び止めてやった。

掴んだ顔面を再び反らして、壁にぶち当てる。



このクソゴリラ…今、『愛してる』って言おうとしたな…?



「ゴリラのくせに、一丁前にほざいてんじゃねえぞ…?このビッグマウスゴリラ!こざかしいぃっ!」




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