王子様とブーランジェール
相変わらず、何の脈絡もない脳ミソだな?!あぁ?
一層の怒りに襲われる…が。
そのセリフは、おまえには言わせない。
俺もまだ、言えるほどの身分ではないが。
「今度そのセリフを口にしようものなら…迷わずインディアン水車にぶち込んでやるからな?!覚えとけ!このクソゴリラがあぁぁっ!」
…でも、いつか。
そのセリフにふさわしい男になったら、言わせてもらう。
いつ、何年後になるかはわからんが。
「…インディアン水車って何?」
「ひどく残酷なる、鮭の大量捕獲マシーンだ!」
「それに俺をぶち込んでどうすんの…」
「魚落としに刃を付けて、ギッタギタにしてやる!」
「はっ!…よくわからんが!俺は神田さんへの愛を貫く…ぐぉっ!」
「夏輝様ぁーっ。ごきげんよぉーうですっ」
俺と高瀬のゴリラの間に、デカい物体が割って入ってきた。
気配で思わず高瀬から手を離すが、代わりにそのデカい物体が、今度は高瀬の頭を真上からわしづかみにしている。
「な、何だおまえ!何だこのデカい女!」
「フリージアでーす?…ゴリラ時間かかりすぎー。麗華ちゃんが『フリージア!昼休みが終わってしまうから処分してきなさい!』って言うからー」
すると、突然現れた山田フリージアは、そのまま片手で高瀬を肩に担ぎ上げる。
高瀬は「うぉぉーっ!」と、悲鳴をあげており、ちょっと切ない。
「じゃあねー。麗しの夏輝様、今日も素敵ぃー。愛してるー」
そう言って、山田はそのまま高瀬を担ぎ、その場を去ってしまった。
凄い馬鹿力じゃないか?
高瀬を軽々と担いで去ってしまうとは…。
突然のことで、ビックリした。
そんな二人が去るのを唖然と見守る。
急に静かになった。
…が、山田がここに来たということは。
恐らくお仲間も…。
「夏輝様!インディアン水車、ご用意致しますか?…オホホホ!」
背中の方から響き渡るこの声。
何をどう考えても、あの御方しかいない。
恐る恐る振り返ると…あぁ、やはり。
「夏輝様、ごきげんよう?」
やはり、来た。来たぞ。
あの巻き髪セレブ、小笠原麗華を先頭に。
愉快な仲間たちが、ズラリと並んでいた。
…ん?何か、人数増えてない?
皆の者で来た?
すると、小笠原が扇子で口元を隠しながら高笑いをしてやってくる。
「オホホホ!夏輝様のご復活した御元気なお姿を見れて、この上なく嬉しい存じますわ!」
やっぱりあんた『お』が多い。